豚肉丸

Tripping with Nils Frahm(原題)の豚肉丸のレビュー・感想・評価

Tripping with Nils Frahm(原題)(2020年製作の映画)
4.7
ニルス・フラームのライブ映像を捉えたドキュメンタリー映画

セリフもインタビューも会場の裏側の様子も何も無く、ただ淡々とニルス・フラームの演奏と会場の様子が映し出される。1つのライブが最初から最後まで続く完全なライブ映画なのだが、同時にライブを撮影しただけでは留まらない、映画的な興奮にも満ちていてかなり良かった!
初めてニルス・フラームの音楽を聴いたのだが、音を一つ一つ積み重ねて音楽を作り上げていくような手法に驚かされた。ベースとなる音の上に徐々に音が積み重なっていき、いつしかシンセサイザーの音も重なって壮大な音の空間が形成されていく様子...舞台上を駆け回って複数の楽器の音が積み重なっていくあの快感...そしてその莫大な音楽の空間を纏めるようなピアノの音...繊細かつダイナミックな音の連続にとにかく驚かされた...

彼が音楽を演奏している姿を映すだけには留まらず、カメラは観客の様子も映す。音楽が形成されるにつれて観客もリズムに乗り始め、身体を揺らしたり立ち上がったりする観客も現れる。音楽が最高潮に達した瞬間、会場は一体となり、立ち上がって踊り始める...彼の音楽が何百人もの観客達の神経に接続されるあの瞬間!
長谷川白紙が「ライブは観客が自由に踊れる空間を形成するのが目的」(うろ覚え)と語っていたが、まさにその例を見せつけられたような感覚で凄まじい。
ニック・ケイヴの『This Much I Know to Be True』は観客が一切排除され、証明やカメラを用いて映像パフォーマンスとしてのライブを最高な形で作り上げていたが、対称的に本作はそれらの映像的なパフォーマンスを排除して演奏と音楽、そして観客の様子も含めた上での映像作品に仕上がっていると感じた。
面白かった!
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