ジェイティー

秘密の森の、その向こうのジェイティーのレビュー・感想・評価

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)
3.9
亡くなった祖母の家の遺品整理でやってきた8歳の少女ネリーは母マリオンの思い出の遊び場だった森へ足を運ぶと、母親と同じ名前を持つ少女マリオンと出会うお話

73分という短い尺とシアマ監督に惹かれて鑑賞しました。
面白いというより何かスッと心に入り込んでくる雰囲気があり、
これだけの短い時間でここまで語れるのは実に興味深いです。

実際の双子ちゃんで撮影したみたいで一瞬どっちがネリーだっけ?となるかなと思ってばみると不思議なものできっちり分かるのは演出が上手いのでしょうか(服装みれば一目瞭然という可能性が微レ存)
これは藤子F不二雄先生の提唱する「少し不思議」のジャンルかなぁと個人的には感じていて、その中に母と娘そして祖母の心の癒しが必要な場面と必要な時間で描いています。

終始淡々としつつも二人の少女が見せる無邪気な姿は本当に微笑ましく本当の娘を見ているかのようになります(まだ僕には子供はいませんが・・・)
とはいえ映画的カタルシスがないかというと始まりと終わりにきちんと用意されている「ある言葉」その時のネリーの表情はとても良く「言えたじゃねぇか・・・」と心でつぶやきながら僕は泣いておりました。

何というかこういう如何にも「でも傑作なんでしょう・・・?」と思える作品に天邪鬼が如く素直に言えなくなる瞬間があるのですが、この作品は何処を観ても新しい発見がありそうな不思議な魅力を秘めていると思います。
僕は前作より断然こちらが好きですね。
クライマックス手前とエンディングで流れる歌が良すぎてまたここでも泣いてしまう情けない僕をどうか許してください。

今年公開作品では特におすすめです。