「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマ監督の最新作とあれば、さすがに見逃すことはできないので、鑑賞してきました。
あらすじを読むと、主人公のネリー(8歳)が祖母の家を訪れた際に、森の中で母の名前と同じ8歳の少女に出会うというもの。
このようなシンプルなプロットで、いかにして映画にするのか興味をそそられるが、流石はシアマ監督、入口は狭いが想像の広がりが大きい。
秒針の音から始まり、ネリーが高齢の老人たちに挨拶をするシーンの長回しも、意識が多いに引き付けられ、ネリーと母マリオンの喪失感をより強く感じることができる。
ネリーと"マリオン"が出会って始める小屋作り(強い風が吹いたら飛んでいきそうだが🥲)は、祖母との思い出を処分するばかりだった沈んだ心を、二人で再建することにより、心を軽くしていく作業に思えた。
そして、最も気になったのがネリーと"マリオン"が劇中劇を演じるシーン。他人に見せる訳でもないのに、ごっこ遊びにしてはやけに気合いが入っている。配役は重複していたが、最後はネリーが父親に、"マリオン"が母親になるという物語。
これはやはり演じることにより、マリオンの母としての自覚を取り戻すということではないか。しかも誕生日とあれば、なおさら新たな気持ちの節目となる。それまで赤い服を着ていた"マリオン"の服の色が青く変わったのも象徴的に見えた。
こうして娘、母、祖母は共有をすることによってお互いを癒していく。
二人の少女を演じた映画初出演の双子のサンス姉妹も素晴らしかった。
時空を超えた三世代の母子の関係性をシンプルに描き、観る者に感動を与えてくれる、おとぎ話のような素敵な作品でした。