母と娘の心の営みを描いた欧州らしい美しく芸術性の高い小品で、雄弁に物語を語るタイプの作品ではなく、淡々とした調子で話は進む。
未来の娘が過去の母と出会うタイムトラベル物とも言えるし・・・作り出した過去の世界に引きこもってしまった母を、未来に生きる娘が連れ戻す話・・・とも言えるが、明確な物語が語られる訳ではない。
正直に言うと、非常に私的な作品なんだろうな・・・という事は分かったが、それ故に終始、僕には良く分からなかった。ましてや、男の子だった僕には、女の子同士や母娘の心の営みは理解出来ないのだ。
だだし、良く分からないから感動しないという訳ではない。
初めこそ、自分には乗れない作品だな・・・と一歩退いて観ていた僕が、エンドロールが流れ始めたら、あふれる涙をこらえる事が出来なかった。
何故、自分がこんなにも涙を流しているのか・・・非常に私的な感情が起点になっているのは当然だが・・・上手く言語化出来ない。
特筆すべきは、8歳の母と娘を演じる双子の姉妹の自然な演技が魅力的で、少ない台詞ながら親子の愛情を感じる演出も含めて素晴らしい。
そういった良質なシーンの積み重ねが、普遍的な感情を呼び覚ましたんじゃないかな。
映画でしか表現出来ないものが描かれた、良質な作品だった。