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秘密の森の、その向こうのrのネタバレレビュー・内容・結末

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

母が母親の役割を負うために、諦めてきたことはどのくらいあっただろう。ここからいなくなりたいと思ったことや、そんなときその気持ちをどう慰めていたのか、わたしはなにも知らない。母が母親でないとき何をして過ごすのが好きだったのか、どんな服や化粧がすきだったのか、どんな話題で心躍ったのか、なにも知らない。もしかしたら、本当は沢山聞いてきたのかもしれないけれど、ネリーの父親のように全部忘れてしまったのかもしれない。あなたはわたしの友達じゃなくて、母親だから、と役割を負わせて。当たり前だけど、わたしがこどもであるということは、母が母親であるということ。歳や、性別、家族を含む社会的な役割が、相手との関係を狭めていること。家族って他の共同体と何が違うのかずっと考えていたけれど、一度決まった役割を変えることはできないところにあるんだなと思った。
ネリーは、母親がここからいなくなりたいと感じていることを自分のせいではないかと不安に思っており、それに対してマリオンが、彼女のさびしさは彼女の問題であるからあなたのせいではないという。ネリーにとってとても救いになる台詞だが、その一方で寂しさやいなくなりたい原因の一端は家族にあることは明白で、その問題を彼女の問題だから、と本人以外がいうことは絶対にしてはいけないことだとも思った。自分で選んだことだから、自分で母になることを決めたから、それを選択することで諦めなければいけないことや我慢しなければならないことの全てが自分の責任であるはずはなくて、家族であるということは、その共同体にいる人の、気持ちの問題とされるようなひとつひとつを、一緒に考えて、なんとかできるかもしれないということでもあるのだと思う。また、自分の問題だからと全て抱えこまなくても良い場所なのだとしたら、私が思っているよりも家族という共同体って良いものなのかも、と思えてきた。
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