まさかの73分。短い!偉い!
ずっと気になってるけど期待値上げすぎて冷却期間中の『燃ゆる女の肖像』のセリーユシアマ監督の最新作。
夜中諸般の事情で家にまっすぐ帰りたくないのでレイトショーのないアップリンクで鑑賞。こんな日に限って携帯の充電がないので会員料金を使えない。くそ。
私の心の中はあなたの心の中
監督のん初めてみる。映像きれい。動きも上品で雄弁。すごい静か。寝た。
内容はシンプルで取り立てて起承転結を望むものじゃないがそれを70分に収めてるのがまた信用できる。
ロリコンは全員これみて心洗われるといい。てちてち歩いててまじ可愛い。
憶測だけど燃ゆる女は抑圧の中で求め合う2人の情愛みたいなのがダイナミズムを産んでるんじゃないかと思うけど、本作は少女と(幼少期の)彼女の母親の心の交流を描いたもので、癒しに満ちた内容であるのは間違いないがいかんせん丁寧でゆるやか。
祖母を亡くした事で傷心した母親の家出という、実際に起こると子供にしてみれば一大事な出来事を前にも、激しい感情の揺れは画面上に表立って出ない。
子供は無表情な場面が多いけど、案外その方が笑った時のかわいらしさや子供らしいはしゃぎ方をした時の驚きが増すし、子供って結構むすっとしてること多いからこれは真理かもしれない。子供は無表情がいい、とな。
すごい賢くて優しい女の子だなあと思う。お母さんも別に悪い人なんかじゃないけど、子供からしたら不安な時間だよな。親の心がここにない時間って。
映像美てのは確かにすごいあったけど、さりげない演出力の高さが気になった。
オープニングのお婆ちゃんがクロスワードを考え込んで記入してる様に見えるカット割で、しかし写り込む手は幼い子供の手。あれ?と思ってると画面が引いて、主人公の女の子ナリーが傍に座ってクロスワードをしてたのだと分かるシーンから素敵。と思わされた。驚きというかマジックをちょっとしたシーンに加える確かさ。
ご褒美みたいに喜んでお父さんの髭を剃りたがるシーンがなんか印象的。髭って子供にとって珍しいものだよな確かに。バスルームの壁のタイルおしゃれだね。
幼少期のお母さんに出会ってお家に招かれた時(それは自分ちでもあるわけだけど)のリアクションが、引きの絵であれ?って顔して壁を触り、壁紙で判りづらいクローゼットを探りあてる挙動なのが上手いと思った。言葉なく気持ちを読み取らせる動きがうまい。その前のシーンで自分ちのクローゼットを手探りで探してる場面があり伏線貼ってるのであれ?これ自分ちだよね、やっぱり…って思ってるのがよくわかる。
エンディングの曲すばらしい
宇多丸氏の評の中で『シームレスに夢と現実を行き来するような』物語という意見があり面白かった。なるほど確かにそうかも。現実と空想の世界を地続きのものとして子供が捉えてるという心象風景だと捉えられる。
【今日の名言】🦑ネタバレあり
ーみんながあちこちで
違うこと考えてる
わかる?
(母とソファで眠りながらの会話)
ーわたしも辛かった。
ーどうして?
ーお別れが言えなかった
ー毎日言ってたじゃない
ーでも、最後の時は言えなかった
ー…
ー最後だと思わなかった
ーこわくない?
ー何が?
ーあなたのお母さん、いなくなって
ーちょっと怖い。今までも、『もうここにいたくない』て感じの時があった。
ーあなたのせいじゃない
ー…そうかな?時々わからなくなる。
(無表情が一瞬だけ歪み涙を堪えてる)
ーわたしが辛いのは、わたしのせい。
ーもう少し遊べるね
ーそれ未来の音楽?
(2人ぽつりと部屋の中)
ー変なかんじね。
ーそうだね。
ー…
ーマリオン
(抱擁)
ー…!ナリー(笑みを浮かべる母)