ブルーノ

秘密の森の、その向こうのブルーノのネタバレレビュー・内容・結末

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

 オーバーオールのルック、頭を横に揺らしながら歩く姿、孤独と知性を湛えた凛とした佇まい、何よりもネリー役のジョセフィーヌ・サンスの被写体としての存在感にまず目を奪われてしまった。もちろんマリオン役を演じたガブリエル・サンスも、ネリーに比べ無邪気な様子ながら母としての顔を覗かせる瞬間があり驚嘆した。

 テーマについても、母と娘が互いに名前で呼び合うエンディングに凝縮されているように、歴史ある一人の個人として親を再認識するという、自分が最も心惹かれるテーマの一つであるということもあり大変感動した。
 
 同等の立場として子供時代の親と邂逅するというシチュエーション自体は、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(青年期ではあるが)など決して目新しいものではないが、少ない台詞と8歳の少女たちの表情だけで見せる73分間は、涙がすっと流れる得難い映画体験だった。
 
 演出面においても、暗闇で油断していた母の喪失の表情を懐中電灯で一瞬見てしまう場面や、それまで赤と青の服装で対照的だった母と娘が同じような服装で抱き合うエンディングなど、感嘆するものがいくつもあった。また、「私が悲しいのは私のせい」という幼い母の台詞が、ネリーの救いになると同時に、母(ネリーの祖母)の死という非常に個人的な理由から家を一時的に出て行ってしまった母自身への優しい肯定にも感じられた。お泊まり会に際して、「今度はないの」とそっとネリーが父を説得するシーンも、奇跡を奇跡として素直に受容する姿勢に心打たれた。

 個人的ハイライトは、冒頭の車内で母にスナックを食べさせるシーンと、パドルボールが虚しく森に消えていくシーン。


【メモ】
 
 公式ホームページによると、監督はスタジオジブリの作品にもインスパイアされたと語っており、はじめてネリーがマリオンの家を見たときに雨の中急ブレーキをする様や、小屋を飾り付けて得意げにオーバーオールのポケットに手を突っ込むところなどは、ジブリ作品を感じさせた。


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