うえびん

秘密の森の、その向こうのうえびんのレビュー・感想・評価

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)
3.4
もりのなか

2021年 フランス作品

娘が生まれて、僕が最初に買って読み聞かせた絵本は『もりのなか』(マリー・ホール・エッツ)でした。少年が紙の帽子をかぶって、新しいラッパを持って、森へ散歩に出かけます。道中で、いろんな動物に出会って、楽隊を組んで、みんなで一緒にかくれんぼをしていたら、動物は一匹もいなくなって…、そこに誰かが迎えにきていた。そんな話です。

そんな話を読み聞かせていたからか、娘は小学校の高学年までトトロが森の中に実在すると信じていたようです。

本作の主人公は8歳の少女ネリー。死んだおばあちゃんにさよならを言えなかったことが心残りだったよう。31歳のお母さんのマリオンとお父さんと、おばあちゃんの家を片付けに行きます。そこで、昔、お母さんが森の中に作ったという木の小屋の話を聞きます。

ある日、森の中を歩いていると、木の小屋を作っている8歳の少女マリオンに出会います。
ネリーとマリオン、徐々に仲良くなってゆく二人は、実際の双子が演じているので、自然な掛け合いと距離感が微笑ましいです。

顔がよく似ているので、度々、どっちがどっちだか分からなくなりますが、それはそれで、物語の設定と相まって面白いです。

西洋では、森は古くから“異界”とされて、ゴブリンみたいな不気味な怪物が描かれたりしますが、本作の舞台の森は“冥界”として描かれます。

さようなら(au revoir)

冥界で、孫から祖母へ伝えられなかった言葉と思いが伝えられたことで、「私が悲しいのは私のせい」と言う母の哀しみは癒やされたようでした。

『もりのなか』の迎え人は、お父さんでした。本作の迎え人は、お母さんでした。

原題はPetite Maman(小さなお母さん)

絵本のような静かな小作品。物語はファンタジーなんだけど、映像はひたすらリアルだったので、動物や何かの異界の森が感じられる要素を加えると、さらに冥界のイメージが膨らんで、作品に厚みが増すんじゃないかと思いました。
うえびん

うえびん