僕の同僚でありフォロイーさんでもあるdarisakmatsuさんが、この作品を映画館で観て「不思議な作品だった」と教えてくれました。
僕もセリーヌ・シアマ監督作品が好きだったので、本来なら本作を映画館で観るつもりだったのですが、なにかと時間が合わずに見逃してしまい、本日ようやく観ることができました。
なるほど、これは「不思議な作品」と称するのがピッタリですね。これ以上言葉を並べたとしても、この心に残る不思議な感覚はとても表現しきれないと感じました。
作品としてファンタジーの要素もさほど手の込んだものではなく、その仕掛けの見せ方も双子の姉妹をキャスティングしただけで、何も工夫がないように感じるのですが、それでも観ていられるのです。この世界観に浸っていられるのです。むしろこれが良いんです。このシンプルな演出でなければ、微妙に変化する少女の心情を上手く描けなかったと思うのです。
ネリーが初めて訪れた土地でマリオンと出会い、不思議に思いながらも深く親しみを感じていき、友達になり、二人で共鳴し合う特別な時間を過ごして行きます。そのかけがえのないひと時の中で、ネリーは断片的な違和感を紡ぎ取り、そこからこの森の秘密にたどり着きます。
その秘密に触れた事でネリーは何を思い、何を感じたのでしょうか。
森で出会った友達
出て行ってしまった母親
死んでしまったお婆ちゃん
あの森で様々なことが交錯し絡み合った複雑な時空感は、ネリーの心の中へと綺麗に収まります。その気持ちが伝わるからこそ、ラストに見せる親子のやり取りがなんとも言いがたい温かかみを感じさせてくれます。
この時のネリーの心中を言葉で言い表すことは難しく、仮に言えたとしても“不思議”という言葉しか思い当たりません。これ以上下手に言葉で濁してしまえば、あの柔らかく描かれた最後の親子の会話や、ネリーとマリオンの二人が過ごした不思議な時間が全て台無しになりそうで怖いのです。
セリーヌ・シアマ監督。
やはり僕は彼女が描く繊細さが好きなんだと改めて思いました。本当に素晴らしい作品です。
それとサンス姉妹のお芝居もとても素敵でした。