Ricola

秘密の森の、その向こうのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

こんなことが自分の身にもし起きたとしたら…と考えると、より涙が止まらなかった。

親子という関係上、いくら仲が良くて友だちみたいと言えども、親子は親子なのである。子供がまだ幼ければ尚更、母親の本当の心の内(特に暗い部分)なんて入り込めないのだ。それならばお互いが同じ立場になれば、対等に接していくなかで心もほぐれていくのではないか。
自分と同い年のお母さんと出会って、親友になれたら…。


運転中のお母さんにもお菓子を食べさせたりジュースを飲ませて後ろから手を伸ばし、お母さんがフフッと微笑むなど仲の良さはうかがえる。
でもせっかく2人で亡くなった祖母との思い出の家に来たのに、お母さんは突然家を出ていってしまう。そんななか娘のネリー森を散策していて出会ったのが、自分とそっくりの見た目のマリオンという女の子だった。無論それがネリーの母である。マリオンの母、つまりネリーの祖母も若い姿でネリーの前に現れる。なぜ二人とも若い頃の姿で、ネリーはそのままなのか。どこから時空が歪んでこうした出会いに結びついたのかという理屈的なことは描かれない。なぜならそこはこの物語において、説明不要なことだから。そんなことより三世代に渡る母と娘の絆が物語の肝であることはわかるだろう。

想像力豊かな子供ならではの発想を、子供のお母さん、マリオンも話してくれる。
さらにおばあちゃんとのクロスワードの時間が繰り返される。

一方で父は大人のままでネリーを楽しませてくれる。子供の頃怖かったものをネリーが聞くと、二人しかここにはいないけれどこっそり耳打ちをして秘密を打ち明けてくれたり、ネリーにひげ剃りを手伝ってと言ったり、父は自分の娘ネリーと、大人であり親であっても友だちのように接する。それは元気なときの母との接し方と同じだ。

「わたしが悲しいのはわたしのせい」
本当にそうではなくても、子供は親の言動から色々と感じとってしまう。
子供の前で親は笑っていてもどこか悲しげなことを、子供は親が思っている以上に感じる。親子関係において、それもまだ幼い子どもに対して自分の思いを吐露することはできないだろう。だからこそ、同じ年齢の母、あの頃のマリオンとそのお母さんに出会った不思議な出来事は、ネリーにだけでなくマリオンにとっても現実に起きたものとして、しっかり自分の経験となっているのだ。そのように希望を見いだせるラストであったと思う。
Ricola

Ricola