メキシコシティ警察のリアルに迫った意欲作。
再現パートのスタイリッシュな映像と実録パートの自撮り動画が対照的。新しい体験だった。
理不尽な現実を前に「どう思う?」という言葉が重く響く。
冒頭に実際の警察官の詩が引用されるが、字幕に違和感があったので自分で訳してみた。
▼原文
Oirás las sirenas cantando
Más y más cerca de aquí
Reza que no estén cantando
Esta noche para ti.
▼字幕
サイレンが聞こえる
どんどん近くなる
海の精(セイレーン)でありませんように
この夜を あなたに
▼筆者訳
お前はサイレンを聞くだろう
この近くで、もっと近くで
今宵、人魚(セイレーン)がその歌を
己に向けないようにと祈れ
「サイレン」と「海の精/人魚(セイレーン)」はスペイン語で“sirena”。同音異義語を活かして、歌声で航海者を誘って難破させるといわれるセイレーンと、事件を知らせるサイレンをかけている。自分に危険な出動要請がかからないように祈る心情を表現した一篇だろう。この映画を観た後だと、心底共感できる。