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座頭市の歌が聞えるのMASHのレビュー・感想・評価

座頭市の歌が聞える(1966年製作の映画)
3.0
座頭市シリーズ第13作目。この頃の作品は面白いことには面白いのだが、マンネリ化もあって見分けがつきにくいのが難点。印象的なシーンもあるにはあるので相変わらず楽しめる作品ではあるのだが、シリーズの中では埋もれてしまう作品な気がする。

この作品の特徴は「謎の琵琶法師の登場」「天知茂の再出演」「座頭市vs太鼓部隊」といったところか。初代かつシリーズ屈指のライバル、平手造酒を演じた天知茂。今作でもそのカリスマ性ある雰囲気は最高ではあるが、いかんせん物語への絡み方はイマイチ。ライバルとヒロインとのドラマが市の物語と関係が薄く、二つの物語を別々に食べさせられている感覚だ。

座頭市の物語は中々興味深い。特に度々挟まれる琵琶法師との会話は、シリーズ通してのテーマである暴力について新しい視点を持ってきている。「理不尽な暴力には剣で迎え討つ」というシリーズでは当たり前の展開に、ある種メタ的に疑問を呈しているのだ。巻き込まれる者たち、そして何より剣を振るうその者が暴力の渦から逃れられなくなる。どこにも属することのできない市の孤独は、まさに自身の暴力によって生み出されていることを再確認させられるのだ。

殺陣は少し多めだが、全体的にはそんな印象に残らない。クライマックスの太鼓部隊との戦いは、その作戦の滑稽さとは裏腹に陰鬱な雰囲気を生み出している。また常に真横から写すというのも視覚的に面白い。市の耳を封じるという手が全く持って意味をなしていないのが残念だが…

正直シリーズの中では見劣りするものの、映画としては十分楽しめるというのが座頭市のすごいところ。ただ、全作網羅するつもりじゃなければこの作品はパスでもいいのかな
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