垂直落下式サミング

座頭市の歌が聞えるの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

座頭市の歌が聞える(1966年製作の映画)
3.8
座頭市は似たような話が多いので、どれをみたんだかみてないんだか覚えていない。はじめてだと思ってDVDを借りたら案の定二回目の鑑賞になった。
プログラムピクチャーとして、ストーリー展開の澱みの無さとか、手堅い撮影や演出とか、娯楽映画としては決して悪い出来ではないのだろうけど、今回の敵役もケチな田舎ヤクザだし、用心棒の浪人を再び天地茂が演じてはいるが、彼が背負っているものは第一作の平手造酒なんかと比べると少々俗っぽいもののような気がする。
自身の無頼性を子供の前でみせてしまったことについて市が思い悩むなど、シリーズの新しい路線を模索しているようだが、それについては明確な解答が示されることもなく、悪人から金をカツアゲして結果オーライみたいな軟着陸をみせる。あれ市がいなくなったらまたやるんじゃないの?皆殺しにしないと!
座頭市の弱点が騒音だと知ったヤクザたちが太鼓の音で市を追い詰めようとするのだが、特に明確なロジックはなく突破されてしまうため、やはり本作でも市の荒唐無稽な強さに拍車をかけていくスタイルに迷いはないようで安心した。
タイトルから座頭市が歌うのかと思っていたら、勝新の歌唱パートはなく、道中で出会った琵琶法師による一曲のことを指すようだ。彼が歌う場面の異世界かのようなヴィジュアルがいい。彼といい女郎屋のお蝶といい、旅先で出会う人々が市よりもミステリアスな魅力を放つ一作だ。