福岡拓海

明け方の若者たちの福岡拓海のネタバレレビュー・内容・結末

明け方の若者たち(2021年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

ふとした拍子に、誰かの仕草、出来事、風景などで昔好きだった人のことを思い出すことってありますよね。飲みきって潰されたハイボールの缶が二つ並んでるのを観て、少し切ない気持ちになりました。

物語全体としては、現実にもよくあるような出来事が淡々と描写されていました。
淡々と、と感じたのは、きっと物語の登場人物に似たような人が自分の周りにいたり、そんな話を聞いたことがあったからかな。
そういう意味ではリアルな映画だったのかも?でも起伏のようなものを作ろうとしている点もあったから、自分には刺さらなかったのかな。まー、刺しにくるような映画でもないから、観終わった後にふぅ、、うん。ってなったのは正しい反応なのかも。

淡々となんだけど、なんだか人間の二面性を何度も突き付けられた気がして、少しきつかった。それって現実だし、二面性なんてみんな持っているものなのだけれど、映画みたいな鑑賞してる側から観ると、つまり全部わかっている所謂、神視点で見せつけられると、普段なら知ることができない、他の人には隠している気持ちや、その状況が見えてくるから、なんともいえない気持ちになっちゃう。シーンでいうと例えば、「僕」が友達に連れてかれて行った風俗店で、何の仕事してるんですか?の問いに対して、本当は企画の仕事はしたかったけど、出来なかった仕事なのに、企画とか?って見栄?を張って答えたシーンとか、ねずみ講紛いのセールスに騙されている、自分では勝組だと思っているからこそブレーキが踏めなくなっている中山くんの振る舞いとか、不倫だってわかっていても、今の楽しさや心地よさ、苦しさから目を逸らすように止まれない二人だとか。それでも夫から連絡が来れば、「僕」に連絡一つもせずに夫のところに戻れる「彼女」だとか。

この映画、少しタチが悪いと自分は思っていて、それは登場人物が完全な悪じゃないから、なんか誰も責められないんだよな。思いっきり悪役が出てる場合だと、観てる側はそこをみんなで一緒に批判して、少し気持ちよくなって、すっきりするんだろうけど。中山くんが僕を飲み会に誘うときの描写なんかは、こいつなんか憎めないな、というか悪いやつではないんだろうな、って思わせてきたり、「僕」が自分がほんとうにやりたかったことができてない中でそのストレスを支えてくれていたのが彼女で、それが実は不倫だったっていうのも「僕」を責めることを許していない気がするし。彼女にしたって、旦那を強く裏切って不倫しようと決意したわけではないとことか。うん。責められない。まぁここまで語った上で言うのもなんだけど、人間が人間を書いてる物語なんだから、人間くさくなるのは当然なんだけどさ!日常でもその人がいい人だって認識してると、その人の行動一つでその人自身を責めることってできないよね。それでも普段はその人の二面性ってそこまで見えてこないからさ。普段見れないもの、見えてはこないものを再確認させられたってことなのかな。書いてる途中でおもったんだけど、この映画ってそんな二面性を再認識するってメッセージがあったりする?!拡大解釈しすぎかな?!しすぎだよな(笑)

一つ、ここで取り上げて考えたくなったシーンがありました。それは、彼女が飲み会を抜ける支払いの際に描写されていた、領収書だらけでお札の向きも揃っていなかった財布を取り出したシーン。
これって何を表現したかったのだろう。ストレートに捉えれば、彼女の自己紹介。つまり、彼女は少しズボラでアバウトな人だよって説明してる。「僕」側からすると、少しびっくりしつつも、そんな些細な事は気にならない、むしろアバウトさが好感に思えた、とか。少し深読みしてみると、彼女は夫と別れ?(空港で指輪を外されて)心がすさんでて、領収書を整理する心の余裕すら実はなかった、という意味。さらに深読みすると、不倫、浮気をしやすい傾向にあるといわれている女の人の特徴には(気になって色々調べてしまいました)モテてこなかったことにコンプレックスがある、好奇心旺盛、だらしない(片付けを後回しにする=問題を先送りにする)などが特徴としてあげられるそうで、最初の一つ目はわからないけど、二つ目、三つ目は「彼女」によくあてはまるのかな、なんて思ったりして、財布の汚さから、この人は不倫をしてしまうかもしれない人って視聴者に匂わせていたのかな、って思ったり。描写にそこまでの意図がなかったにせよ、筆者(原作未読のため)、もしくは映画監督が、不倫する人を描こうとして必然かのようにその要素が彼女にのっかってきたのかもしれない、なんて脱線もいいとこかもしれないけど、そんな考え方も面白いなって思いました。なんでそんなシーンが頭にひっかかったんだろう、とも思う。なんでだろう。

ヒロインの仕草や、下北沢のエモい感じがいいって勧められた映画だったから、そこはとても味わえたと思う。半年ぐらい前に下北沢を少し走って、友達が言ってた「明け方の若者たちごっこ」ってのの意味が後から追いついてきた(笑)
あとは、劇中歌。二人の恋愛模様のいい感じの雰囲気を後ろで曲流しながらプレイバックするのってなんかずるいよね。きのこ帝国の東京は特に好きな曲だったから何かわからないけど、なんか悔しかった(笑)
「彼女」がアラームにしていた、キリンジのエイリアンズも聴いてみて好きになった!2000年リリースの曲だから、もしかしたら彼女の夫が好きな曲で、夫は少し年上なのかな、とか妄想してみたり。だとすると「僕」にその曲が刺さってたシーンってなんか残酷にも思える、、
みなさんは2019年にリリースされてる空音のHugって曲におんなじフレーズとメロディでエイリアンズのサビの一部が引用されていて、エイリアンズのオマージュ曲としてリリースされているのを知っていましたか?自分は空音の曲の方を知っていて、映画観ながら、このエイリアンズって曲のサビ、聴いたことあるフレーズだなぁって思ってたんですけど!そちらが先だったんですね、驚きとなんか発見できた嬉しさ。知らなかった方はそちらも是非聴いてみてください!

さて、また長々と書きましたけど、
誰かを好きになったときは理屈じゃないことだらけだし、言葉では表現しきれないし、言葉では表現できなくていいものだし!なんて当たり前のことも言っておいて、以上感想おわり!

PS.自分が飲んでた方のお酒を自然と渡すのはあざとすぎやしないか!?