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ボーはおそれているの散歩のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.1
なんかユダヤ的な話っていうのは何となく聞いていたんですが、まあユダヤの事はよく分かんないしアリ・アスター監督の頭の中なんてもっと分かんないしで、つまりよく分かんなかったです。っていうか何て説明したらいいのかよく分かんない作品でした。でもまあ、相変わらず提示される呪いとしての家族(っていうか母親)だったり死後更に強くなる念みたいなものだったり、支配される苦しみやだからこその自立や解放に対する恐怖だったり、、そういうものをひっくるめた罪悪感に苛まれ続けるくだらなくも壮大な旅の話だったのかなって。ボーじゃないけど終盤の展開には「これ、俺の話じゃん」って感じる所も多かったので、ボーと誕生日が同じって知った瞬間はギクッ!ってなって個人的に心臓に悪い思いをしました。1回観ただけなので分からないだらけだったし、劇中のあれこれ(っていうかほとんど全部)に関しては説明を受けないと100回観ても分からないだろうなって感じなんですが、でもそういう分からない事も含めてめちゃめちゃ面白かったです(そもそもボーだって理解できてないだろうし)。作品として何が起こっているのか分からなくてもそれぞれのシーンが凄く良くて、序盤の水を買いに行くシーンの無駄に迫力のある感じとか最高だったし、『オオカミの家』のクリエイターが参加しているという劇中劇のシーンはそれ自体はよく出来ていたんですが「そんな気の抜けたオチってありかよw」って笑っちゃったし、映画の終わってアリ・アスターってクレジットが出た瞬間は生まれて初めて「ブ~ッ!」って音出して吹き出しちゃいました。でも「そもそも『ヘレディタリー』と『ミッドサマー』もこんな終わり方だったな」って思うと背筋がゾワッってする感じもあって、やっぱり今作もまぎれもなくアリ・アスター作品でした。映画としては脱構築とも言える作品作りを続けているのにキャラクターに対しては徹底的に閉じ込めているのが性格悪くて大好きですね。

改めて観ても「1つ1つのシーンが長ぇな」って思ったんだけど、何か暴力とか迫害とかの理不尽の追体験としてはこの訳の分からなさは結構的確な演出なのかなって思いましたね(勘違いさせられてるだけかもだけど)。あとラストの展開を観て意外とちゃんと物語を閉じにきてんだなって感じられてちょっと面白かったです。
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