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ボーはおそれているのMasterYuのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.6
常に不安に苛まれているボー・ワッサーマンは、顔を見たこともない父親の命日のために、数ヶ月ぶりに母モナに会いに行くことになっていたが、ちょっとした隙に旅行の荷物と部屋の鍵を盗まれ途方に暮れることに。
そんな中、先程まで電話で話していたはずの母が怪死したことを知らされたボーは、何とかして母のもとに駆けつけようとするのだが、次々に異常な事態に巻き込まれていくのだった・・・。

怪作監督アリ・アスター作品。
179分、「な・ん・な・ん・だ・こ・れ・は?」状態に陥る。

正直処理が追いつかない感じではありますが、この長尺で最後まで釘付けにさせる画のパワーが強大。
自分の好みとしては「無し」の部類に入る内容なのに、その剛力に持っていかれてしまいました。
そしてこの奇妙な世界観に翻弄されるボーを演じたホアキン・フェニックスの引き出しの多さに、改めて驚嘆させられたことは言うまでもありません。

にしてもボーが住む街のヒャッハー具合といい、4部で構成されたそれぞれの舞台設定の特異性や、ボーが都度直面する問題の異常性は何なの?
そして母親モナの愛憎、常軌を逸しすぎて引く。
こんな母親に育てられたせいで、神経がおかしくなってしまっているボーには同情しかない。
そうした同情心も相まって、翻弄されるボーと観ている側をシンクロさせてしまう構成は上手い。
何が起こっているのか理解できないのはボーも観客も一緒ですもんね。

で、あの結末までの流れ。
もう知らんわという拒絶反応と、意味深なラストカットをジーッと見つめてしまう中毒反応のせめぎ合い。

好き嫌いは抜きに、こうした作品を紡ぎ出せるというのは凄いんだとは思いますよ。
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