靜

ボーはおそれているの靜のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
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「なんか嫌だな〜〜〜」と思うことをしらみ潰しにやる。まるで底辺を知らないように立て続けに起こる「なんか嫌なこと」のわんこそば状態で、観客は居心地の悪さを常に背負わされ神妙な顔で笑えるのか笑えないのか分からない微妙な笑みを口元に張り付けたまま身を委ねる。3時間も。可哀想で可愛いボウの顔面をまじまじと見つめていたらあっという間に終わったかというとそんなことはなく、きっちり体感3時間でした。でも過不足を感じない3時間。

「なんか嫌なこと」が発生する場所を見ると、生まれ出た瞬間から植え付けられていった種が長い年月をかけて根を張り葉を茂らせ思考に関与する様子が見えてきて、厄介なものだなと思う。取り払おうとして絡め取られて一歩も進めない。
わたしが子供を産まない選択をする主たる感情は、一つの人生を生きなくてはならない他者を他ならぬ自分が生み出す責任に耐えられないのと、母になった自分が意識的であれ無意識であれ子供という存在を精神的に支配しようとする可能性が恐ろしいことにあるので、こういった母性を扱った作品を観ると気持ちがより強固になります。
最後はしんみりしちゃったな。

あとは、こんな作品を撮っていながら母親を招待して一緒に鑑賞するアリ・アスターが最も怖いですね。彼の屈託のなさは素敵だと思う。怖いけど。
靜