たむ

ボーはおそれているのたむのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.6
才能ある監督と主演のコラボレーションはいつも映画ファンの夢です。
アリ・アスター監督、ホアキン・フェニックスさん主演の本作はその夢の実現であり、表現は悪夢である、という作品です。
主人公の名前はBeau、フランス語だと美しいという意味ですが、is afraidと続くタイトルが既に期待を高めます。
179分、始まりから終わりまで、言語が不能を目指したかのような不条理世界が描かれます。
ホラーというより不条理コメディ。
『哀れなるものたち』や『ファイブナイツアットフレディーズ』そして本作と現代にフロイトの精神分析を復活させようとするような作品が続きます。
本作の核だと思ったのは、自分が産まれる前の事は何もわからない、ということ。
本作もウディ・アレン監督の影響が強いです。
デイヴィッド・リンチ監督が父になる恐怖を『イレイザーヘッド』で描いたように本作は息子としてこの世に産まれる恐ろしさを描いています。
エヴァか、という気もしてきます。
昨今の状況が、女性の生きる困難さを描く作品が増える中で、全裸で走り回るホアキン・フェニックスさんの姿に、男はつらいよ、という映画を観た思いです。
わけがわからない不条理コメディですが、アリ・アスター監督の中では、とっつきやすい印象を持ちましたね。
たむ

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