Breminger

ボーはおそれているのBremingerのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

アリ・アスター監督の新作、予告から滲み出る不気味さに加え3時間という長尺という、ただならぬ雰囲気を抱えてんなーと思いながら劇場にINしました。

これは気が狂うわ…と思いながら引き攣り笑顔で観ていました。もう途中で振り落とされてから後半は意識半分で観ていた気がするくらいには圧倒されてしまいました。

初っ端、音楽がうるさいから音を止めろと隣人から言われるけど全く身に覚えが無いし、処方された薬が水と一緒に飲まないと死に直結するとかだったりで水を求めて外に出たら全裸男が暴れ回っていたり、カードが使えないからあたふたしてたら、なぜか外の人々がボーの部屋に入って行ったりと、もう観客を突き放して突き進むストロングスタイルに突入していったので、この時点であーヤバいわ(汗)ってなりました。
風呂に入ったら入ったで、天井に男が張り付いていて、そこから全裸で逃げ出したら、警察に撃たれそうになって逃げたら車に轢かれて、そこから他の全裸男に刺されまくるというもう悪夢見てんじゃない?ってレベルでした。これはスリラーでもホラーでもない、コメディだなと頭を切り替えて観ることができたのがまだ良かったです。

そこからボーを轢いた夫婦が娘の部屋にボーを寝泊まりさせるというこれまた唐突な展開で、なんか屋外にヤバい半裸男が暴れ回ってましたし、娘は娘でヒステリックに喚いてペンキを飲んで窒息死したり、そこから夫婦や半裸男に追いかけられたりして、妄想の世界に飛び込んで行ったりするので、意識飛んでた方がまともに観れるんじゃないかってくらいには情報のパンチが凄まじかったです。この妄想の世界も淡々と進んでいくので頭真っ白でした。

主人公のタマタマが肥大化しているの伏線回収が、まさかの父親が巨大ペニス怪獣という奇想天外な回収の仕方をした時にはもう座席からひっくり返っちゃうんじゃないかくらい驚いてしまいました。
そこに発狂おじさんが突撃してきて、ペニスをブッ刺しまくってたら、ペニスの刃に頭を貫かれるという、ゴア強めの特撮でしか観ないような描写をなぜかこの作品で観れたのが謎収穫でした。

母という力があまりにも強すぎる母に囚われたボーが終盤では可哀想になってきて、ただ生まれて、ちょっとイタズラを幼少期にしていたのを母親は自分から奪っていったと解釈していたりと、母親もかなりの毒持ちだったのが明らかになってからは展開的にずっと辛いものがありました。

ラストシーンのコロシアムみたいな場所での尋問はもう置いてけぼりだったので、何やってるんだろう…と一歩引いた目線で観ていました。
子供の頃の悪行(迷子になった時に母親が呼んでるのに出ていかないとか、母親の下着を悪ガキたちに触らせたり持ち帰らせたり)が祟ったラストの転覆は今までのツケが回ってきたのかなと思いました。

撮影前に自分を辱めるために奇声を上げたホアキン・フェニックスは本当怪演でした。文字通り身を粉にする勢いの暴れっぷりで、この人じゃなきゃ1時間も持たなかったんじゃってくらい、俳優としての底力を感じることができました。

全編通してボーの不安を映像化したとんでもない一品でした。なんでこんな作品を作れるんだろうというよく分からない関心が生まれてしまいました。
よく分からなかったという言葉でササっと片付けてしまいたいんですが、どうしても何か引っかかりながら劇場を出てしまったので、このレビューを書いてる時もまだ困惑しながら書いています。罪作りなアリ・アスターに今後も翻弄されていくんだろうなぁと思いました。あー怖い怖い。
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