熊犬

ボーはおそれているの熊犬のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
2.7
【ライフが削られる…】

原題:Beau Is Afraid

神経質で何事にも過度に不安を抱いてしまう男ボー・ワッサーマンは、治安がゴッサムシティなみに最悪な町で日々不安に晒されながら生活していた。母親に会いに里帰りをする予定だった日、彼は電話で母親が怪死した事を知る。
弁護士によると母親の遺言により、ボーが来るまで母親の遺体は埋葬しない事になっていた。ボーは不安と戦いながらもなんとか実家に帰ろうとするが、様々な理不尽に巻き込まれなかなか帰る事が出来ない…果たしてボーはこのカオスな里帰りを完遂して母親の葬儀に間に合うのか?
…な映画。

-----
アリ・アスター監督最新作。
最悪を煮詰めた様な映画を撮る彼が、ホラーじゃないものを撮るのか…こりゃ気になる!絶対胸糞系な気がするけどね!
というわけで観に行ったけど…

控えめに言って、悪夢。支離滅裂なタイプの悪夢。
ヘレディタリーもミッドサマーも悪夢には違いないんだけど、少なくともストーリーとしては成り立ってた。でも、今回のこれはなんだ…?本当にただの悪夢を無濾過でそのまま観させられている感じ。終始混乱状態…それが狙いなのかもしれないけど、残念ながらちょっと面白いとは思えない。

この映画に関してはネタバレも何もないと思うから、気にせず書きますが、少しでもネタバレを気にされる方はご注意で。

映画の序盤は「あ~、きっとこういう事なのかな?」と思って観てる。
中盤に来て、ちょっと理解に苦しむけど、まあ最初の解釈でギリギリ成り立つか…と思って観てる。
終盤…そろそろ苦しい、きっとまともな説明なんかできないんじゃないか…?と思いつつギリギリで観続ける。
そして"屋根裏"にて一気に置いてけぼり。は?
その先はもう、結局ここまで何を観させられたのか、全く理解が出来ない。

一応消化してみようと考えてみたんだけど…

きっとボーは対人恐怖症、薬物恐怖症、蜘蛛恐怖症、爆音恐怖症、決断恐怖症、強盗恐怖症、広場恐怖症、警察恐怖症、病院恐怖症、発言恐怖症、性交恐怖症、幸福恐怖症、両親恐怖症、意見恐怖症、視線恐怖症、その他実在する不安障害を一式コンプリートして、かつトゥルーマン症候群とかも併発した不安界のスーパーエリートで、母親はそんなボーの為に世界一安全を気にする巨大企業を立ち上げ、企業のベッドタウンに住まわせている(そしてきっと普通の安全な町)。

ここまでが現実の設定。

母親は実際に事故で死んだのかもしれない。ここも妄想の可能性もあるけど、物語が動いた事を考えると、ここまではまだ現実として考えてみた。

で、その先はもう全てが、不安障害をフルデッキで持っているボーの頭の中の妄想なんじゃないかなと。現実の彼は風呂から抜け出す事もなく(そもそも天井に男なんか最初からいなく)、そのまま妄想の中で母親の葬儀に駆け付けようと妄想でず~っと四苦八苦し、妄想のまま風呂で溺れ死んだ。

どうかな、確かに見ようによっては喜劇か…?
まあ、真剣に考察なんかしてないし、もう疲れたからこれ以上は考えない。

尚、不快なところも多いしストーリーは色々と支離滅裂なんだけど、不思議と3時間観ていられる映画。映像自体が美しく、なんかあるんじゃないかと色々探してしまうし、あとはもう純粋にホアキン・フェニックスの演技力のおかげなのかね。もう一回は観ないけど。

■本日のビール『Paranoidphobia』
醸造所: Totopia (日本 / 愛知)
作るビールに何かしらの恐怖症の名前を付けるトートピア醸造所。そんな恐怖症が!と思うようなものがちょいちょいあるのですが、こちらは"妄想恐怖症"との事。
もの凄く濃いヘイジ―IPAが得意な醸造所なんだけど、こちらのビールも6%ながらしっかりと味わいが濃く、トートピアにしては軽めな度数に、らしさがしっかり出た味わい。オーツ麦のクリーミーさとピーチの甘さ、草の香り。
重い映画にビールをプラスで、トリップ度合いが増すかも…?
熊犬

熊犬