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ボーはおそれているのtakaeのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.6
ママ、きがへんになりそうです。

いや、きがへんになりそうなのはこっちの方です。

ミッドサマーについてアリ・アスター監督は『自分の体験した失恋を描写するための手段であり、パーソナルな部分を切り取ったいわばセラピーのような役割を果たす映画』だと言っていましたが、正直私はそういうところがあまり好きではなかった。

いや、いいんだけど、それをあんな風にとんでもなく分かりづらく見せた上に気分悪くさせて、観る側に「えっ、どういうこと?」って思わせて、どういうことかを一生懸命考察させてまで自分のことを理解して欲しいのか!超絶甘えん坊か!みたいな気持ちになってしまって(我ながらすごい言い方)

そういうこともあり観に行くのを迷っていましたが(しかも3時間)、思い切って観に行ったらやっぱり今回も監督自身のセラピー映画でした。

完全なる私の勝手な印象を書くと、これはアリ・アスター自身の母親との関係をテーマにした精神分析の過程を映像というフィルターを通して表現したものなのかなと。
それを観客として見ているのが我々で(ラストのあのシーンがまさにそう)そういう意味で何重もの入れ子構造になっている作品なのかな...とも思いました。

精神分析、親殺し、マザーコンプレックスとエディプスコンプレックス、去勢不安...などなど、今回はどちらかというと仕事をしている時の脳ミソで観ていたからか、割と客観的に冷静に見れたような気がする。そこまで不快な感じはしなかったかも。

人の心の中なんて混沌としていて、言葉で説明しようとしても言ってるそばから嘘っぽくなるし(私はね)アリ・アスター監督自身の家族関係、特に母親との関係が無意識レベルを含めて描かれたらそりゃぁ訳分からんよ!

でも、監督にとっては自らが抱えてきたものを映画を通して外在化することで色々保っている部分もあるのかなぁ...と、そしてそれを私達が一生懸命理解しようとしていることもひっくるめて監督のセラピーになっているのかな?なんて、そんなことばっかり考えながら観てました。

なんかアリ・アスターのことしか書いてないんだけど(笑) え、もしかして私、アリアスターのこと好きなの?(違う)

とにかくホアキン・フェニックスのお芝居、大人の赤ちゃんみたいな瞳やその表情の変化は凄かった。
現場で気を失ったとか聞いたけど、そりゃあ気も失うわい!って思いました。本当に凄かったです。

好きかどうかと聞かれたら好きではないけれど、でもやっぱり自分の目で確かめてよかった。何に関しても自分で体験することって大事。
3時間、想像していたより長くは感じなかったけど(トイレはかなり我慢した)家で観たら集中するのが難しそうなので、ご興味ある方はぜひ劇場で。
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