ヒノモト

ボーはおそれているのヒノモトのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

「ミッドサマー」「ヘレディタリー 継承」のアリ・アスター監督最新作。

不安症の男ボーが離れて暮らす母親の怪死を知り、一刻も早く駆けつけるためにアパートを出るが、日常とは違う光景に苛まれ、行く先々で災難が降りかかるというお話。

過去2作よりも圧倒的に良かったです。
精神的ホラーが内包されていて、かなりダークなコメディというような味わいでした。

ボーが抱える不安や恐れというものを歪曲化した世界の旅そのものが観る側に対しての裏切りになっているものの、過去2作よりホラーから離れた分、母親という絶対的な立場を極端な設定ながら際立たせたことで、立場による見え方の違いが倒錯した世界を作り出していて、投げかけっぱなしになっていないところに好感が持てました。

ここから先、ネタバレを含む感想となります。

様々の映画のオマージュを含んでいる作品といえますが、大枠は現代的な「トゥルーマン・ショー」であるといえます。
映画そのものが、母親が牛耳っているらしい大企業の管理下にあり、映画ロゴから劇中内の製品パッケージ、ポスター、ニュース映像などなど、確信犯的な大胆さでダークな仕上がりになっていることが見事です。

あと、中盤のアニメ合成パートは、「オオカミの家」の監督2人が手がけており、こちらもダークな「オズの魔法使い」のようで、ボーの意識の飛躍混沌ぶりに拍車をかけている描写は素晴らしかったです。

弱い立場の人=性善説からの裏切りがあり、観る側の意識との乖離を引き起こすことで、アリ・アスター監督らしい気持ちの置き場の難しい映画とも言えますが、前述したように映画そのものが母親によってコントロールされた仕掛けであるとするなら、子育ての苦しみからくる愛情のねじれにも、意外と納得のいくお話と言えると思いました。
もちろん、ボーにとっては災難そのものでしたが。
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