ミミクリンクス

ボーはおそれているのミミクリンクスのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

アリアスターは天才だけど、愛する人にこっぴどく裏切られた経験でもあるんか…?と思うほど、作品テーマが共通してるな。

序盤から中盤あたりまでは最高に面白い。カフカの「城」に、起きたら嫌なことがほぼ全て起こる最悪な日を足した感じで、笑いながら観ていた。
最悪なことは、起こるなと思ってる奴に引き寄せられるからね。

森に入った辺りから急に怪しくなってきて、あれ、まさかボウが恐れている対象って毒親か…?という雰囲気に。あまりにしっかりとそれと出してくるので、分裂症的な曖昧な世界認知を楽しんでいた自分は少しがっかり。

しかし終盤、ここからが最高。序盤の、最悪なことは“全て”起こる最悪のマーフィの法則と、中盤の、曖昧にせずしっかり提示するメソッドが合わさり、もはやメタファーであるはずのワーストな事態をそのまま現実として描写してきて思わず笑ってしまった。

セックスさえも文字通り監視する母親、実家の屋根裏部屋に監禁されているビックおちんちん=抑圧された男性性、そして極め付けはトゥルーマンショーからのどこまでも(物理的に)抜け出せない母親の干渉…これって現実⁉︎を金持ちの製薬会社CEOという設定で解決しようとしてくるのもまた面白い。

カフカの作品のように、現実に一雫の非日常な設定を落とすことで、メタファーをそのまま現実として描くことを可能にし、そこにある不安と滑稽さを浮き彫りにした本作。そこにしっかりとアートとしての面白さがあるところに、監督とA24の地力を感じる。