いけ

ボーはおそれているのいけのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

未熟な男性性とそんな男性を庇護する女性性の話だと思った。

第一幕はトホホすぎるボーが可哀想すぎて、もはやコメディ。ショートコント「こんなアパートメントは嫌だ」状態。
世の中がいかに暴力で溢れているのかをこれでもかと突きつけてくる。

第二幕では、心身ともに傷ついたボーが謎の夫婦の元に辿り着く。ボーを手厚く保護してくれる夫婦だけど、戦死した息子への愛情をボーに投影してるのがだんだん分かってくる。そして、戦死した息子の影に隠れ、愛情を与えられない娘と一緒にボーは正に"トリップ"する。

第三幕で、ボーは親を亡くした人々の謎のコミュニティに出会う。そこで上演される寓話的な演劇にボーは自分を投影していく。愛する人と子供をもうけ、困難を乗り越えて故郷と息子たちに再会する話は、ボーの理想を描いていると思った。しかし、そんな理想的な世界も暴力によって打ち砕かれてしまう。

第四幕で、遂に母親の葬式に到着。ずっと思い続けていた女性と奇跡の再会を果たすが、全ては(実は生きていた)母親の仕業だと知る。屋根裏の巨大男性器モンスターは強烈だった。そして、母親はいくら愛情を注いでも見返りが得られないことに怒りを爆発させ、それに激昂したボーは母親の首を絞めてしまう。

我に帰ったボーはその場から逃げ出し、ボートで新たな世界に旅立っていくのかと思いきや、衝撃の最終章。
ボーがたどり着いたのは巨大な裁判所。大衆に囲まれながら、ボーの人生がいかに自己中心的で愚かだったかが晒されて、裁きが下される。

何やねん、この話。
特に最終章が強烈だった。
ボーはいつまでも母親の息子という立場を拭えない未熟な人だけど、悪人ではないと思う。
むしろ、僕の中にもボー的な部分はあるし、こんな暴力的な世の中で自分を無条件で保護してくれる人を求めてしまう、そしてその存在への感謝を忘れてしまう事ってあると思う。
そんな人の行いを部分的に切り取って、嘲笑し批判するのは視野が狭すぎるだろ!と裁判所のシーンを見ながら思ったが、さっきまでボーのことをクスクス笑いながら見てたのは自分だよなとも思い、気持ちのやり場がなくなってしまった。

だんだん空になっていく裁判所を見ながら「お前のことだからな」と指を刺されている気がした。
確かに世の中最悪だし、そんな世の中を生きてる自分も最悪だけど、希望や優しさだってあるだろうよ!何でこんな救いのない映画作るんだよ!と思いで映画館を後にした。
いけ

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