ネクラ

ボーはおそれているのネクラのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

ボーはなにを恐れているの?
全てを?母を?母の過干渉を?
自分の不安定さを?

悪趣味で自我のないトゥルーマン・ショーみたいだった


・最初のカウンセラーとの会話で「母を殺したいと思ってる?」に対して「そんなわけない!」と強く否定?していた

→本当に親へのコンプレックスや殺したい気持ちがあったら「なんでそんなこの聞くんですか?」とか疑問や困惑がでてくるのでは?でて聞きてたかもしれないけど忘れているだけかな?

ボーは母に対して鬱屈した感情をかかえていたんだろうな。生まれた時から父親の影響がなく、強くて仕事にも精力的な母が父の役割も果たしていたから、母に対して父からの抑圧と母親的な過干渉の両方を受けてエディプスコンプレックスが生じていた?👨🤱


・ボーは信頼できない語り手で、序盤の彼の部屋とその周りの荒れた街並みがあまりに現実離れしている。それは彼が身の回り全てのものに恐れを抱いているからだとも言える?

・「薬を水と一緒に飲まないといけない」と主治医から指示されて、水が手元にないからとパニックに陥って急いで薬を吐き出そうとするくだりはかれの強迫観念的な性格と衝動を表しているように見える。💧
→水が見つからず、そのうえ薬も吐き出せない時にネットで水を飲まなかった場合の副作用をしらべて画面に「入院や死ぬこと?」も表示されていたけど、あれも彼の意思で何か良くないことが起こるに違いない!!!という思い込みでよくない文章を作り出したんじゃないか?とも思う。実際に画面に出ていた文章を読めればいいんだけどわからない。


・実際どこまで幻想でどこまで本当に起きているのか?の境目が曖昧

アパートを出発しようとしたら鍵がない!荷物も盗まれた!クレジットカードも使えない!は半分くらいは彼の中の「母の支配下に戻りたくない、母に会いたくない」気持ちが作り出した幻じゃないのか?🏃

★監督と宇多丸氏のインタビューより★
・以前作った短編のショートフィルムアパートを出ようとしたらフロスを取りに戻ったら鍵とスーツケースを盗まれる、シーンがあり、そのシーンが監督の頭から離れなくて不安を描くコメディのきっかけとしてよい?からそこから長編を作っていった

・ユダヤ人を主人公にすることで様々な迫害を描くことができる。もし黒人が主人公ならこの映画はまた違ったものになっただろう

・ユダヤ的なもの=ボーの神経質なところ、根無草的なところ(途中のアニメパートで津波で一家離散するシーン=独自の国のないユダヤ人の立場を表している?)、母を神聖視するところ?、ユダヤ人が見ると分かるらしいが、言葉にできないユダヤ的な要素が映画に散りばめられている

・観客を苛立たせ、困惑させることがあったとしても観客を作品の世界に包み込んでしまおうということを意識している

・支配される怖さ、支配から解放される怖さどちらもあるのが家族?
→家族は主体性と選択を奪われる義務感を背負わされるものでもある、その義務感に窒息することもある。この映画は義務感に溺れる様を描く。卑劣で有毒な親を誇張して描いてあるが、あくまでもコメディのつもり。

・劇中劇は全て実写で撮るつもりだったが、準備期間が足りず一部アニメーションと編集で補った。『オオカミの家』のアニメーションに感銘を受けてオファーを出した。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


・みんな母の手によるものだったのか?
全部?本当に?

・あの母は見返り村にいる間違いなく。
「こんなにあなたのために尽くしてきたのに、あなたは私に何をした?」とラスト近くに息子に問いかける。
ひとり親で忙しい中、一人息子を育てるのは大変だっただろうけどかけた愛情や手間を回収しようと息子をコントロールするのは違う?はず
仏教で言う渇愛を抱えていて、息子にかけた愛情が全て帰ってこないと自分は幸せになれないと思っているんだろうか?

金と地位があるからとは言え、家政婦を金で買収して死なせるとか、自分の死を偽装して息子の周りの人間を自分の会社の社員で固めるなど、一線を超えている。
→母をこのような執着に至らせた原因はなんなんだろうか?父親不在の原因と関わっている?

そもそも天井裏にいた瓜二つのボー?は誰なんだ?彼の抑圧された意識の表れ?本当に双子の片割れ?
あと男性器の怪物は何を意味する?🕺

母親はボーと船にいた女の子エレイン?のキスを驚き嫌がった。息子の性的な部分を抑圧したことがあの怪物を生んだんだろうか?

・葬式後に急にボート肉体関係に至ったエレイン?はどんな役割があったんだろう?🏩

多分あれがボーの初体験で、それすらもコントロールしようとした母の策略、執着の一つ?
そうだとすると悍ましい。
すごい執着だ。


・途中車の事故にあったボーを介抱した外科医の一家は母から遣わされたんだろうな。だとするとペンキ飲んで死に急いだ娘トニはなんでそんなことしたんだろう?
→家のルールを守らないボーを追い出すために死んだ?わからない。あの一家の力関係がわからない

・ボーの手や腹を刺した「誕生日キラー?」はなんだったんだ?あの人?最初の事故による失神以降、母の家のポスターにちらっといたような気もするけれどはっきりしていない、からわからない。

あのシーンの前に助けを求めるボーが銃を持った警察官をどんどん興奮させてしまって、しまいには逃げ出して撃たれてしまうシーンも、ボーの強迫観念的な思想を感じさせる
全てが怖いんだろうな

・最後にボーが母から罪の裁判を受けて罰せられるシーンは、自分の人生にもいつか起きそうだなと共感的にみてしまった。いつかこんな風に、親や私が迷惑をかけた人たちが私を裁きに来るはずだ、だから正しく生きないと人生が悪い方向に変わってしまう、そんな妄想がわたしの中にあるなと感じさせてくれた作品だった


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