空子

ボーはおそれているの空子のネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

長編作品なうえに、個人的にはいまいちノリが合わなくて、そのくせホアキンでなければ"ただの間延び"ととらえかねられないような、独特のテンポ感で進むので、正直、みていて少し退屈ではあったけど、なぜか目が離せなくて、おまけに観終わったあとは、ゆっくり時間をかけて焼き付けられたかのような気味の悪い感覚が残る。

ちょっと考えすぎかも知れないけど.....

斬新なアンチフェミニズム映画(?)のようにも感じた。

この世に生まれた男性にとっていちばん最初に形成され、逃れることが難しい"女性"という存在(=母)との社会的関係性"を主軸として、その束縛から逃れられないまま珍道中を繰り広げる、"弱者男性"の姿を描いた作品かなと。

なんというか....終盤で母親が父親を"男根の怪物"のように捉えていたあたり、母親はもともとフェミニスト的な傾向があって、だから無理をしないと息子を愛せなくて、彼を徹底して支配下に置かないと気が済まず、さらには"愛情"に見合う"対価"が得られなければ納得ができなくて(なぜなら男である息子は"無償の愛"を与える価値のない存在だから)、それに応えない息子に一方的な憎悪をぶつけ続けた。

その結果として、息子は歪みきった育ち方をして、最後、ようやく目が覚めた彼はなんとか自立するかに思えたけど、結局は呪縛から逃れられずに破滅する。

そんな物語にも思えた。

長編であれ短編であれ、超大作であれZ級映画であれ、観客に"感動" "悦楽" "恐怖" "嫌悪" 等々何かしらの強烈な感情を抱かせる作品は良作といっていいと思うのだが、まさに理屈だけでは語れないようなそんな類の怪作。

余談だが、現在公開中の"哀れなるものたち"と比較して観るとまた面白いかも知れない。
空子

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