渋谷裕輝

ボーはおそれているの渋谷裕輝のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
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『この映画のジャンルはなに?怖がりおじさんの世にも奇妙な里帰り』

◆あらすじ
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日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく。(公式より引用)
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今一番話題の作品ではないでしょうか。

怖がりおじさんの“里帰りという名の大冒険”といえば良いのでしょうか。

終始脈絡の無い展開の連続で、もしかしたら「ママ、きがへんになりそうです。」というキャッチコピーは見ている我々側のセリフなのかもしれません。
ですが不思議と飽きずに最後まで見入ってしまうし、後半で壮大にも程がある種明かしがあるため、物語の大筋は理解できると思います。

「常に強迫観念に追われているおじさんが怪死した母親の元へ駆けつけるべく旅に出る」

という物語を「ヘレディタリー/継承」や「ミッドサマー」などクセが強い激ヤバ作品ばかり撮るアリ・アスター監督が撮ったらそりゃあこうなりますよね。

正直に言うと物語の本質というかアリ・アスター監督の込めた思いというものは2〜3割も理解できていないかもしれません。むしろ一回見ただけで全部分かる人いるんですかね?

ちなみにアリ・アスター監督は雑誌の取材にて「キャラクターが何もできず、どのボタンも機能しないビデオゲームのような映画を撮りたかった」と語っていたそうです。

公式の解説サイトがありますが視聴した後に見たほうが色々と腑に落ちて気持ちいいと思います。↓
https://happinet-phantom.com/beau/analysis/

そしてこれを読んだ後にもう一回見に行くのが一番いいかもしれません。(私は遠慮しておきます)

ちなみに物語の大きな鍵となる中盤の劇中劇におけるアニメーション部分を担当したのは「オオカミの家」で話題となったクリストバル•レオン、ホアキン•コシーニャ両監督です。なんでも、アリ・アスター監督は「オオカミの家」を大絶賛したそうです。確かに好きそうな内容ですね。

今のボーを作り出したのは紛れもなく母親であり、全てにおいて母親の支配下に置かれた結果、ボーは自らの意思で行動や決断することが困難な受動的な人間になってしまいました。幼少期のそういった経験はいくつになっても影響を及ぼすそうです。小さい頃から両親に褒められることが極端に少なく、成功体験もほとんどないまま大人になってしまった私は途中からボーのことが他人には思えなくなってきました。

そんなことも思いつつ、内容が内容だしこれだけ長いと私は自宅での鑑賞の場合、絶対に途中でネタバレや考察を読んでしまいそうなので逆に映画館で見ておいて良かったかもしれません。

点数を付けたり、“面白い”か“面白くない”で判別するのが非常に難しく、配給会社の方々も今作をどのジャンルに分類するか頭を悩ませたのではないでしょうか。

怖がりなホアキン・フェニックスの世にも奇妙な里帰りを3時間ぶっ通しで見続ける覚悟がある人はぜひ!