ホシアイリーン

ボーはおそれているのホシアイリーンのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.1
ずっと胃の中が気持ち悪い。
ボー、もう死ぬしかないんじゃないの…まだ生きてんの、長いよ…と思っていたが、ラストシーンを見ると、その全てはこのシーンにあったのだろうと思う。

ボーは悪い奴では決してない。だが見ていると、もやもやしてしまう。なんでいつも人に聞いてばっかりなんだよ、自分でなんとかしろよ、とか思ってしまう。でも彼はそれがしたくてもできない。あの母親に育てられて、「自立」をさせてもらえなかった。いい奴なんだけどどうしてもイライラしてしまう、人間の本能?的な部分を引き出すのがすごいと思う。単に主人公に感情移入させないようにしている、むしろ馬鹿にさせるように作っている。そこも含めて監督のエゴイスティックな部分が表れていて面白い。

アリアスターという繊細な人間にとって、「毒親」というテーマはあまりに大きく、未だにどう対処していいかわからないのだろうな、と思った。だからこそ彼の欲望は、こうなったらとことん哀れになってどうしようも無く殺して欲しい、ということなのかな。自分から死を選ぶのは怖いから、いっそ徹底的に毒されたい、みたいな…。


モンスターと化した元軍人、スラム街と高級住宅街の対比、際限のない若者の悪ふざけなどから、アメリカ社会への痛烈な批判も感じた。