このレビューはネタバレを含みます
A24×アリ・アスターの3作品目ということで飛びついて映画館へ。前作たちにあったようなホラー要素やゴア描写はないが、メンタル面にするような直接訴えかけるような、また違った角度からえぐってきた。
【所感】
メッセージ性が強く、緻密にデザインされた表現力を感じる。
あのエンディングを迎えたときに「え、、おわり?」とおもったけど、時間が経って自己解釈が進んだり考察と照らし合わせてしっかり鬱になった。
鬱ストーリー、とか客観視して冷静に評価するとかではなく、完全に自分も感情持ってかれてて引きずる。
ただ、それは完成度から受動的に受ける「感情の揺さ振り」がしっかり発生してるからのこと。
3時間とかなりの大作だが、全編見終わった時に必要な長さと理解。
ボーが感じてる抑制による極度のストレスやそこから見えている視界、積み上げてきた負の人生、そしてそれでも継続する辛さ(それの根源がなにか理解することさえできない更なる辛さ)を表現するにはむしろ、足りない。
また、長時間視聴し続けるうえで感じる物理的な疲労は、作品に入り込むうえで必要な要素だったりする。故にシンクロしすぎて本当にぐったりした、、。
【考察】
①ボー(息子)とモナ(母)
◾️JOKERのホアキンフェニックスの作品として視聴したのは2作品目だったが、「また不遇で数奇な役柄なのか、、」と「前作とはまったく違う見た目やキャラの役作り」を体感する。スタンドバイミーのリヴァーフェニックスの弟だし、後から役者一家であったことを知り大変納得。
通常とは思えない心的状況を外部・他者から操作されて作らてしまった人格を表現している。
先天的なASDか、外部からの抑制による後天的なパラノイアなのかいろんな見方があるみたいだけど、どちらにしても辛すぎる状況を作られてしまっており、「かわいそう、、」という言葉で表すには易しいくらい入り込み重い気持ちになる。
◾️モナの屈折した「愛情」は、底からくる執念、固執みたいな異常さを感じ慄く。最近の言い方で毒親という言い方があるけど、その上位。その源泉がどこにあるのか、が分からなかったが、成功者の裏には実は壮大な劣等感やトラウマがあるのかな。
そこから出るボーへの言葉は、本当にみていて辛かった。「誕生日の贈り物」「動物へ餌はあげるのに貧しい人へは手を差し伸べない」「自分への愛情の欠落」は胸を締め付けれる思い、、
ボーはそんなひどい子供ではないし、なんならまっとうな判断ができない状況をモナが作っているのに、それを受け入れることがないこれもまた別の辛さ。
→自分がどちらにも転がる可能性があることに恐怖。極端な感情にフォーカスしているかもしれないが、この作品の心理状況は他人事ではないと感じる。必要以上に求めてしまったり、期待に耐え切れず精神を病んでしまったり、、
②ストーリー・世界観
◾️ボーの状況かつ視点から現実なのか幻想なのかわからなくなることが多々ある。ただ、これもどちらであったとしても結果救われない。エンディングの解釈はどちらなら救われるだろうとおもったけど、どちらもやはり救われない。
◾️ストーリー
起承転結が明確に表現されている。また公式にも掲載があったがその切り替えは、ボーが必ず気絶する瞬間で表現されている。既に記載したが、長編なのでとにかく丁寧に心の機微を表現している。ここも同じくどの場面でもボーの焦りやパニックがベースなので感情の起伏はあるものの何かしらの辛さをはらむ。
◾️理解がおいついていない点
・双子の兄弟 →そもそも物語に重要?
・父親の存在 →屋根裏の秘密と関係があるものの、実態と死の背景がつかめていない
・ボーの住まい →あれだけの拘束がありながらも、なぜ物理的に遠い地に住んでいたのか
母から逃げ出したのか、もしくは母が遠ざけたのか、演出上のものか、、
・エレインの存在→大人になってからの所在が、メイドさんと合わさっていてよくわからない
・国内のポスターとCM
→ストーリーとまったく異なる宣伝の意図。コメディ要素を出そうとしている印象。やっぱり本質で攻めてしまうと日本人には合わないのかな。