DaiOnojima

映画:フィッシュマンズのDaiOnojimaのレビュー・感想・評価

映画:フィッシュマンズ(2021年製作の映画)
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 フィッシュマンズのドキュメンタリー「映画:フィッシュマンズ」のゼロ号試写見てきました。クレジット等の細かい部分を除けば、ほぼ完成のヴァージョン。170分という時間をたっぷり使い、メンバー始め関係者の証言をはさみ、昔のライブ映像やTV出演映像、オフショット映像などで、結成以来のフィッシュマンズの歴史を丹念に追っていく。もちろん見たことない映像もたくさん。監督はラッパー般若のドキュメンタリーなどを撮った人。

 かなりフラットな視点のドキュメンタリーと感じたが、もちろん映像の取捨選択を含めそこは監督なりのフィッシュマンズ観が投影されていて、フィッシュマンズの歴史のどの部分を強調するか、コメンテイターの選択も含め主観はどうしても出る。ここをもうちょっと知りたかったとか、この人のコメントが欲しかったとかいろいろあるが、いざ見終わってしまうと、170分というサイズの前に圧倒されてしまい、「よくここまでまとめたなあ」という感想しか出てこない。見応え十分。170分は長くない。

 もう20年以上も前に実質的に活動を停止しているバンドが忘れられることなく、今も聞き手を増やし続け、こうして映画も作られている、つまり「過去」になっていないのは、フィッシュマンズの音楽の強度は当然の前提として、残された最後のメンバーである茂木欣一の、絶対にフィッシュマンズを過去のものにしない、いまでも通用する「今の音楽」だといういう強い意志と確信にほかならないと思った。欣ちゃんと新宿ロックカフェロフトでフィッシュマンズのトークショーをやったのは2018年の12月だったけど、あの時のトークが今回の映画制作のヒントとなったとスタッフの方からお聞きして、感慨深いです。


 それにしても昨日はエヴァンゲリオン2時間半、今日はフィッシュマンズ2時間50分と、連日長い映画を見てぐったり疲れました。どっちも90年代ポップ・カルチャーの産物だけど、エヴァは90年代サブカルの終わりを告げるような作品となり、フィッシュマンズは変わらぬ価値を伝えている。今はそういう総決算の時期なのかもしれない。

「映画:フィッシュマンズ」は今年夏頃公開予定。(2021/3/10記)

(追記:2021/5/21)

今日は「映画:フィッシュマンズ」の試写。2回目の鑑賞となりましたが、なぜ再度見る気になったかというと、フィッシュマンズのエンジニアであるZAKさんから、音響を手直ししたから見てくれという連絡をもらったため。

 試写会場は前回と同じだし、音が良くなったといっても映画の印象が変わるほどではないだろうと思っていたら、いやはや驚いた。前回と全然違いましたね。音楽の鳴りが良くなったのは当然として、セリフが断然聞き取りやすくなった。前回の時はたくさん登場するコメンテイターの言葉がところどころ不明瞭で、3時間近いサイズに込められた情報量の多さをうまく活かしているとは言えなかった。喋りのプロではない人たちが喋っているから仕方ないと思っていたのだが、今回はそういう箇所がほとんどなくなってすべての言葉が明瞭に届くから、内容がすとんと腹に落ちて、映画の流れがスムーズになり、監督の意図が明快に伝わってくる。コメンテイターたちの思い、ちょっとした仕草から垣間見える感情、フィッシュマンズや佐藤伸治への愛情がひしひしと伝わってくる。

 正直、前回の時は「熱心なフィッシュマンズ・ファンでないとちょっと長く感じるかも」と思ったが、今回の出来なら誰にでも勧められます。試写会場はそもそもあまり音響のいいところではなかったので、音のいい劇場で見れば、さらに良くなるはず。なんでもゼロ号試写を見た茂木欣一がZAKに直接音の手直しを依頼したらしいが、音響って大事なんですね。

 公開日は7月9日。期待していいです。

 会場ではいろんな人に会ったけど、映画の作業とは別にフィッシュマンズのアーカイヴを整備するプロジェクトもいろいろ進行中のようで、来年あたりには形になりそう。そっちも期待したい。
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