ほぼ3時間、鳥肌が立ちっぱなしだ。
フィッシュマンズは、デビュー曲「ひこうき」で知った。その頃パンク少年だった僕には、なんかフワフワした音楽だなくらいの印象しか無かったんだ。
その3年後、ラジオから流れてきた「Melody」「MY LIFE」の名曲ぶりにがっつり心を奪われて、急いでタワレコにCDを買いに行ったんだ。
そこから佐藤伸治の世界観にハマり、当時フィッシュマンズが所属していたヴァージンジャパン解散の後、その後継として設立されたメディアレモラスに新卒採用で潜り込もうとする。
フィッシュマンズみたいな新しい空気を纏うアーティストを発掘する仕事がしたくなったんだ。
が、メディアレモラスは、新卒採用を途中で中止し、その後解散。フィッシュマンズもポリドールへ移籍してしまった。
それから「宇宙 日本 世田谷」まで、フィッシュマンズを聴き込んで、佐藤伸治が表現したいことを少しは理解できるようになっていたと思う。
その後、フィッシュマンズも活動が鈍化するにつれ、僕もフィッシュマンズのことを、あまり気にかけなくなっていた。
だが、忘れもしない1999年3月17日の夜中。
当時、池尻大橋にあった和歌山ラーメンまっち棒で遅い夕食を食べた後、三軒茶屋のTSUTAYAに寄ったんだ。すると平積みで、フィッシュマンズのベストアルバムが売っている。ちょうど発売日だったんだ。
久しぶりに出会ったフィッシュマンズ。思わずCDを手に取って買った。帰って聴くのを楽しみにながら、僕はガラケーでiモードを眺めていた。
そして、2日前に佐藤伸治が亡くなったことを知る。
CDを持つ手が震えた。
そんな90年代終わり頃の記憶が、映像を観ながらフラッシュバックしてくる。
あの頃、佐藤伸治の飄々とした雰囲気の裏に、苦悩の日々があったことを、初めて知ることができた。
今も色褪せない名曲達を残した天才も、ギリギリの精神状態でステージに立っていたんだな。
久しぶりに聴いた「ひこうき」は名曲だった。
音楽はマジックを呼ぶな。