初日舞台挨拶付き上映を鑑賞。
佐藤伸治さん在命当時のフィッシュマンズの出来事を時系列にインタビュー形式で追うドキュメンタリー作品。
現在、海外でフィッシュマンズの音楽が発見されて改めて評価されているが、その音楽性を解明する内容ではない。テクニックの話は出てこない。
ボーカルで多くの曲で作詞・作曲を手掛けられていた佐藤伸治さんという人物の謎を解き明かす内容でもない。彼の死を悲劇的に物語仕立てで描くのでもない。
1990年代という時代の空気感のなかで、フィッシュマンズがどういう空気を纏っていて、バンド内はどのような空気感が漂っていたのかが描かれている。
フィッシュマンズを知らない人が観たら、引っかかる所や刺激物がどこにもなくてピンと来ないと思う。一方で、僕のようなフィッシュマンズの音楽が好きな人にとっては、個々人の想い出を邪魔しない作りになっていて染み入るように浸透してくる作品だった。
手嶋監督は舞台挨拶で、脚色したくないから敢えてナレーションを入れなかったと言っていた。唯一の脚色は茂木さんが現在のフィッシュマンズについて音楽ファンに語りかけるメッセージを最後に持ってきたことだろう。そのメッセージ内容は作品を観て確認してほしい。
僕は、茂木さんのその最後のメッセージがすごく刺さった。フィッシュマンズ現役当時にいくつかアルバムを買って聴いていて、現在もさらにたくさんの曲を聴いているのだけど、正直、音楽性にしか興味を持っていなかった。今回、この映画を観て、フィッシュマンズを作った人たちに目を向けることができ、佐藤伸治さんが不在でも、まだあの空気感に触れられるんじゃないかと思うことができた。すごく収穫だった。
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1998年末の男達の別れLIVEバージョンの『ゆらめきIN THE AIR』が好きなんだけど、劇中でもかなり目立つところで使われていて嬉しかった。
ボーカルの佐藤伸治さんは1999年3月15日に亡くなられた。僕は同じ月に香港に旅行に行ったのだけど、香港は英国から中国に返還されて3年目だった。当時はファイナルファンタジーⅧが発売された直後で、その主題歌でフェイ・ウォンが歌う『Eyes On Me』が香港の街の至るところで流れていた。ファンタジーファンタジーⅧは終末論的な世紀末な空気を纏ったRPGだったと記憶している。1999年というのはノストラダムスの大予言などに感化されて、何かよからぬことが起こるような空気感が存在していた記憶がある。
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上映後の舞台挨拶では、オリジナルメンバーでドラムスの茂木欣一(もてぎきんいち)さん、手嶋悠貴監督が登壇。
何よりも驚いたのが、53歳の茂木さんが20代後半の兄ちゃんにしか見えなかったこと。劇中でも現在の茂木さんが登場し若く見えるなとは思いながら見ていたが、実物は、歳下の自分が言うのもおこがましいが、精悍で若々しい20代の青年といった風貌だった。喋り口調もドラマチックで若々しいし人柄の良さが滲み出ていて、いろいろと見習わなくてはいけないと思った。