うっちー

映画:フィッシュマンズのうっちーのレビュー・感想・評価

映画:フィッシュマンズ(2021年製作の映画)
4.2
3時間あまりの長尺ながら、全く飽きがこなかった。自分はそれほどの大ファンじゃなく、音楽誌の編集時代の先輩から聴きな、といくつかCDを借りて聴き始めたのだった。サウンドは最初から文句なく好きになったが、ヴォーカルが個性的すぎて、ダブならばサイレント・ポエツやリトル・テンポの方が好みだった。とはいえ、『空中キャンプ』は凄いと思ったし、その後の『宇宙 日本 世田谷』の時は当時の勤務先でライターさんと取材に行った。あれはそんな微妙な時期だったんだと。皆さん仰るけれど、とにかく佐藤さんは目が印象的だった。ご本人はめちゃくちゃ華奢なんだけど、目は座っていて、鋭い。日比谷の野音でのライブにも行った。なんだかあまりに凄い重量感に驚愕した記憶がある。

佐藤伸治さんの頭の中には天井や壁が見える空間があって、そこに留まりながら、しかし目に見えないものと格闘し、消耗したのだと思う。最期はあっけなく、悲しいものに思えても、部外者が外からどうこう言うものではない。改めてあのシンプルな詩の世界観の怖さと奥行きに震えた。

お名前の一字が同じで勝手に親近感をもっている茂木さんの、その後の活動のめざましさに注目していたので、彼がたくさんフィーチャーされていて和んだしよかった。最初から最後まで側にいたメンバーであり、いまでも若々しく、楽しそうに活躍していることはホントに凄いと思う。

あまり売れない本を、だけど真面目に作ろうと思いながら働いている自分には、バンドへの思い入れとは別の部分で刺さるところが多かった。もちろん、私には佐藤さんのような才能はないけれど。

ナレーションがなく、字幕も最小限。正統派なドキュメンタリーの手法が活きているし、何より音の臨場感が凄い。

また観たい。地元の館でしたが、お客さんいっぱいだった。
うっちー

うっちー