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映画:フィッシュマンズの010101010101010のレビュー・感想・評価

映画:フィッシュマンズ(2021年製作の映画)
2.0
かなりエグられる。キツすぎる。

俺が知ってたフィッシュマンズは、ポリドール時代からの数年だけだったが、いまだに観るのも聴くのもキツいし、これから先もキツいんじゃないかと、改めて感じる…。
90年代後半の「終わりなき日常」感とでもいうような、空虚な時代の空気が、音楽とともに完全に蘇ってきてしまう…。
まぁ、それだけ時代の空気を音楽で体現してしまっているというのは凄まじいことには違いないし、ピンと張った線が今にも切れてしまいそうなスレスレの奇跡的なバランスで成り立っていたこともありありと感じられるのだが、だからこそのキツさ。
その空気をノスタルジックに、あまりにも感傷的に回想していくような映画の作りが、観ていて、かなりエグられてしまったし、消耗、疲弊してしまった。



(ここからは、完全に蛇足。
例えば、山下達郎的シティポップの持つノスタルジック感。
そしてフィッシュマンズの持つ、スーパーフラット(死後…!)なノスタルジック感。
共に、近年、海外で評価が高まっているようだが、それらの音に今、気持ちよく浸っていってしまうようなところに、どうもノれない自分がいる。
例えば、「メタバース(仮想空間)」と「現実世界」のリアリティが当たり前のように並列化しつつある現在、「現実世界」も逆説的に、ある種の浮遊感を持ったフラットなものとして体感される、そんなところに来ているように思う。
そういった地平において、フィッシュマンズの浮遊感こそが「リアル」なのは、ある意味「分かる」。
でもその一方で、フィッシュマンズのこの浮遊感のあるリアリティって、俺にとっては、(ハッキリ言ってしまえば)94〜97年あたりの「地下鉄サリン事件」とか「阪神淡路大震災」とか「酒鬼薔薇聖斗事件」とかがあった時代の、「現実」がリアリティをもって感じられない、自分の身体が現実からある種浮いてしまっているような感触をまさに体現してしまっているものでもあるのだよ。
フィッシュマンズの音楽、あの空気感に浸っていくのは、ある意味、ものすごく気持ちがいい。実際俺も、彼らの音楽に「救われた」ことは何度もある。だからこそ、いまだに特別なバンドでもあり続けているし、いまだに、数年に一度くらいは彼らの音楽を聴き返して思いがけず涙が止まらなくなってしまうことだってある。
でも、そこにいつまでもしがみついていることはできないし、むしろ、それをかなぐり捨てて生きてゆかねばならない存在、それが俺にとってのフィッシュマンズなのである…と、改めて感じたのでした…。
いやはや、いささか厨二病的な感想に帰着してしまいましたね…、まいったなぁ…、苦笑)。