Inagaquilala

鳩の撃退法のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

鳩の撃退法(2021年製作の映画)
4.0
佐藤正午の原作は、メタ小説的展開もある複雑な構造を持った作品だが、この映像化作品は、それらを見事に消化して、新たに完成度の高いもうひとつの作品に作り上げている。まずは監督と脚本のタカハタ秀太に拍手を送りたい。ふたつの時制が交錯する構造になっているが、現在を象徴するバーの壁にサルバドール・ダリの「記憶の固執」がかかっていたり、後半のアクションシーンに登場する車のナンバープレートを強調したり、監督が仕掛けたさりげない小道具も、物語の解読をするうえでは効果を発揮している。

原作を読んだときは、これは映像化のハードルが高いだろうと踏んでいたが、偽札をめぐる人間模様の物語を見事な牽引力として、最後は別次元へと着地させた力技には感心した。主人公であるかつての直木賞作家・津田伸一を演じる藤原竜也もいい味を出している。2部構造になっていた原作を解きほぐして、津田の現在を頻繁に登場させて、興味を繋いだところも成功の一因かもしれない。いずれにしろ、佐藤正午原作の映像化作品としては、藤田敏八監督の「リボルバー」(1988年)以来の快心作かもしれない。
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