大道幸之丞

茜色に焼かれるの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

7年前に主人を理不尽な事故で亡くした良子は中学生の純平との母子家庭。

旦那が愛人に産ませた娘の養育費、義父の介護施設費など重くのしかかるこれらの費用を逃げることなく背負い続ける。昼間のパートと夜は風俗で働く。映画は冒頭からこれでもかと理不尽な事だらけで観る者は耐えられなくなるかもしれない。そして「自分はこの事態に何をしてあげられられるのだろう」と良心の呵責に突き上げられる。

弱者に対する社会保障として公共住宅に住めても「税金だ」と中学生が純平を揶揄する。これは現代の大きな問題で、弱者を痛めつけているのは政治そのものではなく実はそのへんの正義感ヅラした一般大衆だ。

「頑張ろう」と口癖のように何事にも前向きに取り組む良子が簡単に風俗に勤めるとはなかなか思えないが、底辺だからこそそこには真実があり、良子にとってそこで働く、同様に複雑な苦労を背負う25才のケイだけがすべてを話せる友人だ。困窮した者へは金銭の援助も必要だが寄り添ってくれる優しさが必要なのだ。

良子にはそこからさらに幾重にも悲劇が訪れるが、仲間達と支え合いながら、根本解決は皆無ながら、前を向き続ける姿がある。

主人の友人であるバンドマン仲間も再会した同級生もゲスでロクな存在ではなくなんの力にもならない。この映画には作者都合ですべてを解決してくれるようなヒーローは一切存在しない。だめな男が次々と登場する。

ともかく「何か」を強く感じさせてくれる映画だ。