ばっしぃ

茜色に焼かれるのばっしぃのレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
3.4
元キャリア官僚の老人が交通事故を起こすという実在の事故をモチーフにしている。遺族は大事な家族を失い、生活も苦しくなり、過去の呪縛から逃れることはできない。一方で元官僚の加害者側は一日も早く忘れ、なかったことのようにしたいと考えている。元官僚だからこそ民間人より襟を正して厳格に罪を償うべきでいまだに強い憤りを感じる。事故は過失だが罪を認めないのは地獄に堕ちるべき最上級の悪意だ。私は絶対に許さない。この映画を観て暫く忘れていた怒りが蘇ってきた。この怒りと悲しみを風化させないためだけでもこの映画の意義は深い。
その他、コロナ禍での廃業や首切り、社会的貧困層の生活苦、風俗嬢へのひどい扱い、学校でのイジメと学校の無責任さ、セクハラ、親や彼氏からのDV、離婚したと嘘をつく不倫男などをいろんな怒りを凝縮させていく。社会のルールも弱者に優しくなく無力だ。しかもまわりにいる人間がみんなアホで下品で無神経でクズ人間ばかり。怒りを抑圧し諦めに変え「まあ、頑張りましょう」とハグをするが、やがて怒りのやり場に困る。最後にアングラ劇に嘘偽りない思いと感情を全てぶつけ、少しポップに終わる。
背負いきれないほどの不幸と怒りと悲しみを無駄に詰め込みすぎてストーリー的にゴチャゴチャしてしまい、まとめきれないまま起伏を作ってしまい安っぽく見えるのが残念だ。
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