さらまんだー

THEATERSのさらまんだーのネタバレレビュー・内容・結末

THEATERS(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

年々減りつつあるミニシアターにフォーカスを当てた映画。
人々にミニシアターへ興味を持ってもらい再生の糸口に、という意図ではあると思うが、各々の監督が、各々が思う脚本・演出でミニシアター存続への熱と、個々の監督しての拘りが伝わる。

個人的に特に好きだったのが、
『シネマコンプレックス』と『俺と映画と、ある女』。

『シネマコンプレックス』は、娯楽としての映画をベースに置きつつ、ミニシアターが担ってきた役割、即ち、広い地域に乱立し幅広い人々に映画を提供した広域性の要素と、映画館毎の審美眼に基づく映画の選択や館創り、各館の個としての自立・独自性の要素がバランスよく感じられ、とても良かった。

『俺と映画と、ある女』は男女主演コンビの演技がまず良い。
今野さんは、かなり前に俳優業の仕事が増えたとTVで語っておられたが、違和感がないどころか、演技はピカイチ、役にハマりすぎている。
この役はこの俳優さんにしか出来ない、という言葉は、俳優さんにとって特上の褒め言葉の1つだと思うが、今回はまさにそれ。
脚本の設定も面白かった。短い尺数で大変だったと思うが、余計なことは排除しつつ、けれども複雑性と物語のボリュームを出す。テーマを守り、観客に伝える。ショートフィルムの醍醐味を感じさせる作品でした。

『銀幕エレジー』は、映画とは人に夢を与える場所であり、人はいつでも映画の中の世界のように羽ばたいていける、という映画を観る上で根底にあるようなことを伝えたいのだと感じたが、30分弱の短い時間で、癖のあるキャラクター、複雑な設定構成のため、感情移入が難しく、物語になかなか入り込めなかった。主演女優が、スクリーンの光に照らされながら、ようやく解放されるシーンは素晴らしい。複雑な設定にしたのは、シンプルだが最も寛容なこのシーンを際立てさせるために入れたのかもしれない。
このワンシーンを作りたかった映画なのではないかと思う。

『colorful』は、冒頭辺りで家族団欒の中、黄色い花がモノクロになる演出が秀逸。
ああいう説明的ではなく擬態化したもので仄かに、だが鋭利に"感じさせる"手法はクールでいいね。言葉による説明だと伝わりはするが、存分に安っぽくなる。
しかし終盤の、映画との出会いを受けて、色覚障害の主人公が、まずはスクリーン内でのみ色が分かるようになるシーンの演出はどうなのだろう。前述のような秀逸さがあれば、相当くらってました。
脚本の部分では割とよくある設定なのだと思う。現地の方々?の東北弁がナチュラルでそこは素晴らしかった。話題性だけのキャスティングによる没頭感を削ぐようなぎこちない方言を使う作品たちとは一線を画す。こういう一つ一つのプロ意識には敬意を表する。

映画業界は縮小し、ミニシアターと呼ばれる小規模の単館劇場は閉館のニュースが跡を立たない。業界内でのこのような動きは大変ありがたく、今後、我々映画好きを筆頭に、劇場に足繁く通い、そして次の世代へ劇場の魅力を伝えることを行っていかなければ完全に無くなってしまうだろう。
出来ることからやっていこう、と思わせてくれた映画であった。
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