たま

彼女が好きなものはのたまのレビュー・感想・評価

彼女が好きなものは(2021年製作の映画)
4.5
こんなにも素敵な作品だとは思っていませんでした。主題歌がないのもいいですね。久しぶりに映画の世界に浸り、余韻が抜けません。自分の日常を忘れてどっぷりとスクリーンの中に自分を照らし合わせて作中に出てくる人物の気持ちを考える時間……久しく忘れていたような気がします。

試写前にキャストさんと監督さんから、この映画をどう観てほしいか、コメントを聞いてから観ました。
山田さんのコメントがとっても印象的で、伝えたいことがあるのではなく、どう受け取ってどう感じてくれるかに任せます、というお話をされていました。それが、終盤にかけてひしひしと伝わってきました。演者さんが何か明確なメッセージを伝えようという意思を持って演じるのではなく、愛のある自然体の演技で、観る側を作品の中に引っ張ってくれるような。素敵なキャストさん、脚本監督さん、作品に出会えたなと、心から嬉しく思います。

考えても考えても(想像しても)答えが出ない苦しい悩みの中でも、登場人物が優しくて。じわじわと心が温かくなるような、だけど決してただの幸せ映画ではなくて、痛いところを突かれながらずっしりと心に響きました。私の世界も広がったし、いろいろと考えさせられました。

今は疎遠になってしまいましたが、身近に同性愛の友人がいました。その時は深く聞くこともなく、良くも悪くも他人事という感覚でしたが、この映画を観て、何か酷いことを言ってしまわなかったかとか、私の対応は間違っていなかったのかとか、、、今更ながら考えました。

人に言えないこと、悩みは、誰にでもあります。だけどそれはいつか終わることだったり、時間が解決することだったりします。でも、性に関することって、一生付き纏うし終わりがないんだな、と痛い程分かりました。この作品を見なければ、ここまで深くは気付かなかったかもしれません。人を好きになるとか、愛するとか、幸せになりたいとかって誰にでも平等にあるべきことなのに、苦しんでしまう人もいる。うまく言葉がまとまらないのですが、とっても考えさせられます。自分にできることって、何かあるのでしょうか。

映画館で公開されたらまた観に行きます。
草野監督。素敵な作品を、どうもありがとうございました。
たま

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