パゾ

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のパゾのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

嫌な村だなぁ嫌な一族だなぁ…というじっとりしたストーリーと、その中でたびたび展開されるやや爽快なアクションがアンバランスでしたが、全体的には好きな部類の作品でした。

じっとりした部分については、横溝正史の金田一耕助シリーズをオマージュした様な描写が多かったのが良かったです。

詳しくは描かれなかったですが、
・龍賀一族の長女と若い村長(細目の人)が出来てるっぽい。
・昼から酒飲んでる次女の部屋に明らかに事後っぽいおっさんの脚が映ってる。
・龍賀一族のあの風習
・穴の底のアレ
・穴の底から抜け出た輩への仕打ち
などなど、とにかくろくな事が起きておらず、ろくな奴もいないので、終盤の展開にもあまり引っ掛からず観ることが出来ました。

事件のトリックそのものではなく、事件の背景のドロドロさの方で観客を動揺させるのも金田一耕助シリーズっぽかったですね。

個人的にはバトル部分とのバランス的にそういう部分をもっと出しても良かったんじゃないかなと思います。

また、沙代の東京に対する本当の想いや、時貞翁の最後の種明かしも良かったです。

が、後者の演技が浮ついた小物っぽい感じだったのは少し残念でした。
あれだけおぞましい一族の長なのに、あんな軽いノリで話された事で、そこまで一定の雰囲気を保っていた空気が少し白けてしまった感があったので、もうちょっと何かやりようあっただろと思いました(そのままラストバトルに突入するので尚更に)。

ただ、終盤にゲゲ郎の奥さんの顔がああなって、ゲゲ郎がああなった後で、ああいう展開になって、ゲゲゲの鬼太郎(墓場の鬼太郎?)第1話に繋がり、最後にタイトルどん!という流れはやや強引ではありましたが良いなと思いました。

水木、お前だったのか…という感じですね。
自分達の事を忘れてしまった水木と変わり果ててしまった自分を感じながら、ゲゲ郎が水木に話しかけたのだとしたらあまりに切ないなと思います。

全体的に、細やかな部分と大味な部分がある事で例のチャンチャンコの如くグラデーションのある作品になっている印象も受けますが、地味すぎる作品になる事も無く、最後までサスペンスと妖怪アニメのテイストを楽しむ事が出来たので、横溝正史やゲゲゲの鬼太郎シリーズが好きなら楽しめるかと思います。

あと、多分ですが、一度観た後で最初から観直すと意味が分かる(と思われる)シーンが結構散りばめられている様な気がしたので、そういう楽しみ方もあるかと思います。
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