醜いのは妖怪か人間か。
いわくつきの人里離れた村における後継者争い。自分たちが良ければそれで良いのか。人間は誰しもが損得を考え行動する。100%の善人なんていないのかもしれない。主人公ですら完全無欠ではない設定に真摯さを感じた。
『ゲゲゲの鬼太郎』は第何期とか細かいところまでは詳しくないにわかですが、おそらく好んで観ていた子供時代に目玉おやじの声は野沢雅子さんじゃなかったし、なんなら野沢雅子さんが鬼太郎の声をしていました。
ねこ娘のビジュアルも今と昔では全然違いますが、とはいえ鬼太郎というコンテンツに馴染みはありました。
そんな『ゲゲゲの鬼太郎』の原点であり、目玉おやじが目玉じゃない頃、鬼太郎が生まれる前の物語を描いているのが本作です。
SNSでの好評が火をつけたのかはわかりませんが、都内のシネコンでは公開からチケット完売やほぼ完売状態が継続しており、「鬼太郎ってこんなに人気あったんだ…」という感想が湧き上がるほど驚きが隠せません。
しかも内容としてはホラーやグロ、そして悍ましいほど醜い人間の遺言争いを見せられるので大人向けの脚本になっています。
子供が観るにはちとキツそうな感覚がありますが、そんな作品がこれだけブレイクしているのです。
物語の語り手として、大手銀行勤務の水木というキャラクターが牽引し、そこにかつての目玉おやじである鬼太郎の父が絡んできます。
鬼太郎が生まれる前の話でこんなにも深みが持たせられるのかと、話として実によくできていて感心せざるを得ません。
2023年のアニメ映画を語る上で外せない一本となることでしょう。
〈キャスト(声の出演)〉
鬼太郎の父/かつての目玉おやじ(関俊彦)
水木(木内秀信)
龍賀沙代(種崎敦美)
長田時弥(小林由美子)
龍賀時貞(白鳥哲)
龍賀時磨(飛田展男)
龍賀孝三(中井和哉)
龍賀乙米(沢梅陽子)
龍賀克典(山路和弘)
龍賀丙江(皆口裕子)
長田庚子(釘宮理恵)
長田幻治(石田彰)
ある謎の少年(古川登志夫)
鬼太郎(沢城みゆき)
ねこ娘(庄司宇芽香)
山田(松風雅也)
目玉おやじ(野沢雅子)
※2023年新作映画158本目
