カポERROR

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のカポERRORのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

まいった。
よもや今年も残りわずか3週間足らずのこのタイミングで、これ程ぶっ刺さる作品に出会えるとは。
脱帽である。
正直、開始70分過ぎたあたりまでの私の評価は、いいとこ3.2~3.3pt程度だった。
このままバービー並みに残念な結果になるのかと、ため息と共に半ば諦めかけていたのだ。
そこからのラスト30分。
…私の評価…実に5.0pt…満点である。
やられた。
まさかゲゲゲでここまで号泣するとは。

予兆は『狂骨』だった。
この名がゲゲ郎の口から生まれた瞬間、私の脳内に電流が走った。
そう、私は無類の京極夏彦ファンなのである。
『狂骨の夢』を読んでから、もう四半世紀は経つのではなかろうか。
台場の劇場で耳にするとは夢にも思わなんだ。
それは純粋な驚きだった。
やがて、本作の狂骨が何者なのか、そして真に忌まわしい存在が何者なのか、物語の真相が明かされる。
正に怒涛の展開。

だが、それが本作高評価の本質ではない。
私の心を揺さぶったのは、ゲゲ郎(とその妻)が、我が子を、そして我が子が生まれるこの世界を、文字通り魂が砕け散るまで、命懸けで守ろうとした無限の愛情に他ならない。
そしてラスト。
最後に成仏する時弥を慈しむその言の葉よ。
もう私は金輪際、鬼太郎の父を”目玉おやじ”などとは呼ばない。
彼は、幽霊族の英雄なのだ。

そして、もう一人の主人公 水木。
その過酷な生き様は、正しく水木しげる氏本人の戦中戦後体験をモチーフにしている。
終盤、水木が自らの本心にしたがい行動する一挙手一投足の描写の端々に、本作スタッフの水木しげる氏への強いリスペクトを感じた。
その想いの結晶を観て、天国の水木先生は何を思うだろうか。
この世もまんざら捨てたもんじゃない…と、頬を緩めておられることを切に願う。
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