メッチ

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のメッチのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.5
かつての目玉の親父の過去話をしつつ、水木しげるさんの『ゲゲゲの鬼太郎』という物語の誕生譚。

私個人としては、幼少期にTVシリーズをみていたのと『墓場の鬼太郎』を鑑賞したぐらいなので、『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズはそこまで追っていません。それでも楽しめる作品でしたね。ちゃんとホラー作品としての怖さもありつつ、別作品の『犬神家の一族』と重ねてみてしまうような作品全体の不気味さが良かったと思います。
お話も、目玉の親父がまだ目玉の姿ではなかった頃の鬼太郎の誕生の前日譚みたいなものだったため、本作単体で楽しめる作品でした。なんなら、終わる頃に「鬼太郎が誕生した背景にこんなことがあったのか」と、ひとつの物語が終わったと同時に新たな物語が始まったことを気付かさられる感じ。

なによりも、鬼太郎の誕生話というより、目玉の親父がどういう方だったのかが分かる作品。目玉の親父とその妻とのお話を描いているのが魅力的でした。作者とその妻を描いていた『ゲゲゲの女房』というわけではありませんが、人間に失望する目玉の親父に人間を信じることを教えていた妻を描いていたというのがあったこと。その両親から生まれた鬼太郎だから、それは妖怪も人間もどちらも同じく接する鬼太郎が誕生するのも頷ける。

ちょっと私の偏った見方かもしれませんが、本作で初めて登場する本物語の主人公であり、目玉の親父の相棒としての位置付けだった水木というキャラクターは、原作者と同じ苗字ということもあって、原作者本人と重なってみえてしまっていました。
原作者と同じく水木というキャラクターも戦争を経験して、日本のために戦ったにもかかわらず、粗末に扱われ憤りを感じる様が描かれています。それは、原作者もそうだったのではないかとみていて思ってしまいました。

あとは、ネタバレにならないように記載しますが、エンドロール後のとあるあのシーン。あれはなんだか、鬼太郎という物語をこの世に放つことは良い行いなのか?というメタ視点でみえてしまっていました。(これはあくまで、私の偏った視点ですが…w)

本作を総括して、鬼太郎という1人の主人公が誕生する前日譚でも、その主人公の性格を構成されたのは本作が物語っているようでした。誕生の前日譚を描きつつ誕生譚を描いていたので、とても興味深い作品でした。
メッチ

メッチ