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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のumisodachiのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.1



昭和31年。銀行員で戦場帰りの水木は、とある製薬会社の当主の訃報を受けて彼らの村へと足を運ぶ。便宜を図ってもらうために馳せ参じたわけだが、後継者と目論んでいた娘婿は後継者には指名されず当てが外れる。しかも、とある人物が惨殺されるという事件が起こる。そこへ、妻を探しに来たという外部の男がやってくるが……。

金田一耕助的なムード溢れるホラー。予告編で「おしりたんてい」の映画とか流れていたけど、明らかにターゲットが違うよ!このゲゲゲを子どもと観る人いないでしょ!

不穏で奇怪な予感から謎の村へと向かう導入、村で起こる謎に満ちた出来事、時折挟まれるアクションシーンと、非常にバランスが良い作品。映像的な驚きはあまりないものの非常に美しいシーンもあり、見ごたえがある。そして何よりもストーリーが面白い。

私が本作で特に評価したいのがテーマ性だ。「子どもを搾取し傷つける大人は絶対に許さない」「子どもたちのための未来に対して大人には絶対的な責任がある」という決意と信念に満ちた内容であり、悲惨で救いがないストーリーは決して面白半分につくられたものではないことがわかる。この世で最も醜悪なものはなにか、この世で最も罪深いことはなにか。その一点を深堀しているのが素晴らしい。

そして、その根拠として戦争が示されているわけで。なにが間違っていたのかという論点を、決してごまかさずにまっすぐに刺し貫いていて、最近の邦画としては珍しいほどに輪郭がハッキリとしている。こういう製作姿勢にはかなり好印象を持ったし、今こそ作るべき映画だという意志を感じて力強い。名作。


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