ヒロ

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のヒロのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

24-15-38
忘れないで

超ロングランで上演してくれているおかげでギリギリ劇場で鑑賞できました。
ものすごいエネルギーの映画でしたね…怖いのか悲しいのか切ないのか悔しいのか…終盤では自分でも感情が整理しきれないままに涙が流れていました。

物語の大部分は敗戦の色が未だ消えない昭和31年、列車の中で少女がずっと咳き込んでいるにも関わらずみんなタバコをスパスパ吸っているところなど、どういう時代だったのかという演出がうまいです。

哭倉村では犬神家を思わせるような展開ですが、因習に囚われた山奥の村がホラーテイストともマッチしていてなんともいえず不気味です…

上陸が禁忌とされている島ではモスキート音のような音が不快感と不安感を増大させます。このあたりから前の席の女の子がずっと耳塞いでいてかわいそうでした…

水木は決して悪人ではありませんが、過去の戦争体験から歪んだ上昇志向に囚われており、他人を道具として見る節があります。そのことがのちの悲劇を招くことに…沙代さん本当にかわいそう…

龍賀一族とあの村は醜悪そのものでしたが、沙代さんの悲劇の後にまさかそれ以上の地獄があるとは思いもしませんでした。
時貞はこれまで鑑賞した映画の中でもなかなかいないのではないかというくらいの極悪人で、ジョジョ風にいうならまさに「吐き気を催す邪悪」です。ゲゲ郎や水木君と語り合った未来が奪われた時弥君…映画をみていて、「悔しくて泣きそう」と思ったのは初めての経験でした。

あの地獄のような状況で腹に宿した鬼太郎を守り抜いたお母さんや、人間に理不尽に虐げられたにもかかわらず妻が愛し息子がこれから生きていくであろう世界を身を挺して守ったゲゲ郎からは、憎しみの連鎖を断ち切ること、未来を信じること、そんなメッセージを受け取りました。

現代パートでは、幽霊族のことやあの村で起きた出来事をちゃんと伝えようとする山田の存在がいいですね。

言わずもがなですが、本作には鬼太郎の生みの親である水木しげる先生の戦地での体験が色濃く反映されています。
水木しげるが逝去して久しいですが、二度と馬鹿げた戦争で未来が奪われることのないよう、彼が語った経験や思いを忘れずに語り継ぐことが大事ではないでしょうか。この映画が大ヒットを記録していることでそんな思いが少しでも広がっていけばいいなと思います。
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