ちゃそ

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のちゃそのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.0
交わるはずのない2人が偶然にも手を結ぶことになり、そして相棒となる。目的は違えど敵は同じ。いかにして鬼太郎が産まれたか。隠された過去の話は心を締め付ける。
一つの閉鎖的な村が舞台である。多くの作品でも扱われるように、本作品でも「閉鎖的な村」にはその土地固有の常識があり、そして非常に排他的である。加えて必ずといっていいほど決して漏れてはいけない「秘密」がある。外への憧れがありつつも村のしきたりでそれを叶えることができない。自由がない。鬼太郎の誕生、というテーマを扱いながら、人間の悍ましい一面を克明に描く。
正当化されたルールに縛られ、自らが持つ憧れや夢などを押し殺しながら一生を歩まなくてはいけない人々が数多く登場する。ぎゅっと日本の「伝統」の嫌なところが詰め込まれており、みていて辛い部分が多いのも事実。掲げる目標は崇高なものだからといってそのために犠牲を正当化してはならない。誰かの夢のために当人の意思とは関係なく犠牲になるという運命を辿った者たちはいつの時代にもいるが、そういった存在は本来であればあってはならないのだ。本作品はそういった闇の部分にも光を照らし、考えさせるきっかけを与えてくれる。
しかし、一方で自らが犠牲となって良いと思うほど大切なものも存在するだろう。そういったものは人生においてそこまで多くはないはずだ。幽霊族にとってみればそれは間違いなく鬼太郎であった。
数多の絶望の中に現る一筋の光。どんな想いで後世に残したか。普段アニメを観ない私でものめり込んでしまうほど楽しめた作品であった。
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