春21号

桜のような僕の恋人の春21号のレビュー・感想・評価

桜のような僕の恋人(2022年製作の映画)
4.0
良かった。

まず、泣きました。最後で号泣しました。
でもこの手の映画で泣けた事を評価の軸にしてしまうのは非常に危険な事だと思います。涙腺なんて刺激されてなんぼなもんなんでね

はい、ある種のジャンル的型を前半にこれでもかと畳み掛け所謂恋愛系のいいところも悪いところもしっかりと落とし込みながら後半のドン底のような地獄巡り
震える舌のようなショッキングな病気描写もあるので観る人によってはトラウマを刺激されてしまうかもしれません

本作がよくある難病恋愛ものと違う点は病気の辛さの中にあらゆる情けなさを描いている点
自分の身体がどうしようもなくなって感情がコントロール出来なくなったり、怪しいと思っていても民間療法にすがってしまったりあらゆる辛さを綺麗事無しに描けていたと思います。

そして本作は死と同時に生きていく事も同時に描いています。
この辺は分かり易いナレーションでやや口説く表現されていますが主人公がヒロインと出会い一度失った夢を追いかけて、ヒロインに振られてまた挫折しかけそして本当に失ってドン底からまた夢を追いかける。
夢を追いかけるつまり生きていくところで物語は終わります。

この主人公とヒロインの関係性が凄く素敵で生きていく辛さ情けなさをこんなにも克明に描きながらも最後には力強く生きていく事を肯定してくれる。
あとは何よりも周りの人達を単にカリカチュアした存在にせずきちんと存在感のある人達として描けていたのも良かった。

傑作です。
春21号

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