Mikiyoshi1986

ブーメランのようにのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ブーメランのように(1976年製作の映画)
3.8
明日4月24日は"フレンチ・フィルムノワールの重鎮"ジョゼ・ジョヴァンニの没後14年に当たります。

フランス犯罪小説最高の作家として辣腕を奮い、小説から脚本、監督に至るまで、
ジャン=ピエール・メルヴィルと共にフランス暗黒映画に貢献した立役者ジョヴァンニ。

彼は戦時中に反政府活動や山岳ガイド、戦後はギャングや強盗殺人で死刑囚を経験し、
その脱獄体験を基に執筆した処女作『穴』は巨匠ジャック・ベッケル監督によって映画化。

他にも『冒険者たち』の原作者としても知られ、
彼の作品はアラン・ドロンやジャン・ギャバン、ベルモンド、ヴァンチュラといった名優が尽く主演するなどフランス映画界に深く影響を与えた、とにかく異色の経歴の持ち主なのです!

本作『ブーメランのように』は、ドラ息子がひょんなことで警官を射殺してしまい、会社社長である父親ドロン様があらゆる手段で我が子を助けようと奔走する父性愛映画であります。
家族のため仕事一筋に生きてきた父親が今一度、息子との絆を取り戻す犯罪仕立てのストーリー。

ジョヴァンニはかつてアラン・ドロン&ジャン・ギャバンのW主演作『暗黒街のふたり』で前科者の更正の難しさを描きましたが、
自伝的要素を含んだそのテーマは本作でも地続きとなっています。

また前述した通りジョヴァンニ自身、死刑判決を受けてたものの、父親の努力でなんとか命を救われたという経緯があります。
本作の息子は、まさしく彼自身の投影。

一方でアラン・ドロンもいわゆる「マルコヴィッチ事件」でギャングとの繋がりが露呈し、黒い噂が絶えなかった時代。
そして彼の愛息アントニーへの溺愛ぶりも本作の父親像に大きく関わっています。

犯罪者の社会復帰を拒もうとする社会への憤りはジョヴァンニとドロン、この二人が実生活で経験してきた切実な吐露でもあるのです。
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