Yurari

戦火のナージャのYurariのネタバレレビュー・内容・結末

戦火のナージャ(2010年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ロシア映画って観た事なかったなとふと思い鑑賞。
なんだか独特な空気感の映画だった。
父コトフと、彼の娘ナージャの物語。
戦闘シーンが多く体力を使うが、
合間に挿入された父と娘が夕暮れ?のなか
二人の時間を過ごすシーンは美しかった。
他にも印象的なシーンがいくつかあった。

まずは冒頭。
スターリンを象ったケーキに、
スターリンご本人の顔を押し付けるシーンには度肝を抜かれた。
実際は夢だが、同じ事をしたいと思ったロシア人は
当時どれ位いたんだろうか?

戦闘シーンでは、統制も何もあったものじゃない雰囲気の中
人々がどんどん死んでいく。
赤十字の旗を乗せた船を、
ドイツ空軍が爆破するシーンもあった。
空中からウンコして嫌がらせをしようとする
ドイツ兵の下らなさと言ったら・・。
この船に乗っていたナージャは機雷につかまって助かる。
また、このタイミングで偶々居合わせた神父より洗礼を受ける。

そして誰もが印象的だと感じるであろうラストシーン。
死の間際にいる青年に胸を見せるナージャ。
これよりも、二人の会話が印象的だった。
「神を信じるのか?祈りの言葉を?」
「知ってる」
「言ってくれ」
「すべてをその意志に委ねる」
「俺の意志?」
「彼の意志よ」
そして空を仰ぎ、戦闘機の音を聞いた彼は
「スターリン?」と言った。
・・スターリンは神格化されていたと言う事なのか?
この辺りは知識がなくてよく分からないが、
妙に印象的だった。

所々笑えるシーンがあるが、
笑いを想定したものなのか、
ロシア人の感性なのか分からず、
「これ、笑っていい所・・?」と迷った。

あと、よく奇跡が起こる映画だなとも思った。
機雷に掴まったナージャが割とすぐ陸地を見つける、
コトフがいた病院跡に落とされた機雷が
シャンデリアに引っかかり何とか助かる等。

そして、ストーリーが理解しきれなかったと思ったら
この映画は三部作の2作目ということを観賞後初めて知った。
完全には理解しきれなかったが、
ロシア映画の奥深さを感じたので
しばらく、他のロシア映画も観てみようと思う。

(追記)
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの、「戦争は女の顔をしていない」で、この映画のラストと同じエピソードが実話として描かれていた。
夜勤の看護師がと、重症の大尉とのやり取り。

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「白衣のボタンを外して、乳房を見せてくれ…女房と離れてもうずいぶんになる…」
わたしは恥ずかしくなって、何か答えて、テントを出ました。1時間後に戻ると、彼はもう亡くなっていて、あのときの微笑みを浮かべたままで…
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なんとも物悲しい最期だ。
Yurari

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