MasaichiYaguchi

聖なる蝶 赤い部屋のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

聖なる蝶 赤い部屋(2021年製作の映画)
3.3
江戸川乱歩の「悪魔人形」を現代的に翻案した本作は、生徒を盗撮して罷免された高校教師・杉浦と、その彼に以前、優しくされたことで惹かれた女子高生・ルミの歪んだ純愛物語が凄絶に耽美的に繰り広げられる。
この作品の結末は途中で予想がついてしまうのだが、そこに至るまでの二人のやり取りが本作の全てだと思う。
この作品では「永遠の美」がテーマになっていると思うが、ロバート・ゼメキス監督の映画「永遠に美しく...」を観れば分かるように、その美には無理があり、代償が伴う。
美を留めるには、絵画や彫刻等の美術、更に写真や動画の映像で記録する方法があるが、生身で美しさを持続させるのは並大抵ではない。
そこで生き写しの人形、代表的なものとして「マダム・タッソー」の蝋人形のようなものに行き着く。
杉浦とルミの愛、そしてルミの若さ溢れる美しさを永遠に留める為に取った手段は虚しさと愚かしさしかない。
美は儚いから美しいのであり、また美しいものが年を経ることで生まれる侘び寂びの枯淡の魅力もある。
清い水の流れも澱めば濁る、自然に流れてこそ美しさがあるような気がする。